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【1万PV達成!】天は二物を与えず(仮)  作者: Kuu
第3章 『何も望まなかった中の上』
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第58話 活動停止



 そして事件は起きた。


「活動禁止!?」

「ああ」

 俺はレンコントへ行くと、楓に話した。

「え、どういう事!?」

「今朝、俺達三人、生徒指導室に呼ばれてな……」


 俺と藤崎と田辺は三人揃って、朝から生徒指導室に呼ばれた。

 呼び出された理由はもちろん、アニマルサポーターの活動内容についてだ。生活指導の先生は、開口一番「アニマルサポーターの校内での活動を一時停止とする」と言った。理由は簡単「一般企業との癒着が懸念されている」のだそうだ。もちろん、そんな事はない。ただ、それを証明する方法がない。なので、学校側としてはそれを無視できず、一旦活動停止措置をとる。と、そういう事だった。


「そんなぁ……」

 楓は肩を落とした。

「そうがっかりするな。疑念が解ければもとに戻る」

「そうかなぁ……そう言うのって、立ち消えるっていうか、なぁなぁにされちゃわない? 大人ってそういうところはずるいよ?」

「お前も大人だろ?」

「うーん、だから……先生が信用できない」

「まぁ、そう言うな」

「じゃ、ポスターとかはどうなるの?」

「全部はがされた。校内新聞も次からは掲載しないし、校内放送でも放送しない」

「だよねぇ……ああ、納得行かない!」

「ありがとな」

「え? 何が?」

「心配してくれて、怒ってくれて」

「当然だよ……蒼汰のことだもん……蒼汰が良いことをしようとしているのに、止められたら黙ってみていられないよ……」

「でも、何もしちゃダメだからな?」

「……う、うん」

 今は何もしない方が良い。ただ傍観して、待つだけだ。


 ──


 一週間後


 校内で、アニマルサポーターを復活させろという、抗議運動が起きた。

 もちろん、デモや暴動などではない。それは静かに始まり、校内で大きくなっていった。


 俺たち三人はそれを知らなかった。時々俺達のところへ来ては「許せない」とか「暴挙だ」とか「陰謀だ」とか「濡れ衣だ」と言って俺たちをかばい、励まして帰る生徒は居た。その度に俺たちは「ありがとう、でも、問題を起こさないでくれ」となだめるだけだった。


 しかし、一度くすぶり始めた火は消えず、徐々に広がっていった。署名活動という方法で、どんどんと輪を広げていったのだ。当然、俺達が先導したわけではない。むしろ全く関わっていない。では誰が発起人なのか? 最初は全くわからなかった。そしてその後、活動が大きくなってくると、代表者が明らかになっていった。


 レンコントから犬を引き取ってくれた、女生徒だった。


 彼女は俺たちに内緒で事を進めていた。俺たちに迷惑をかけないように水面下で動いていたのだ。後から知ったことなのだが、最初は実際に引き取ったメンバーを集めた。犬や猫を引き取った人たちは、間違いなく賛同してくれると思ったらしい。そこから徐々に輪が広がり、それは「引き取れなかった人」に広がり、「興味があるけど、行動を起こさなかった人」に広がっていった。

 行動を起こさなかった人とは、俺達に声をかけなかったが、興味があった人だ。そして、実際に飼えるかどうかわからないというその葛藤は、署名なら出来るという活動へと動き始めた。


 こうして活動は静かに大きくなり続け、実に全校生徒の八割の署名を持って、代表者の彼女は、校長室の扉を叩いた。


 これまた聞いた話だが、その女生徒の話に、校長はたじたじだったらしい。さらに言うと、その女生徒は「今やっていることが否定されるのであれば、この学校の、学校としての資質が問われる」とまで言ってのけたらしい……。何とも豪気ごうきな女子高生である……。


 こうして俺達は無罪釈放となり、再び活動を始めると、これまで以上に俺たちに声をかけてくれる人が増えていった。


「ねぇ、もうホームページ、要らなくない?」

「そうだな、櫻井、どう思う?」

「うーん……俺達の活動を、校内に留めるのであれば、もう要らないな」

「校内に留めないって、どういう事?」

「この活動を、俺達がやっていることを、真似たい奴らが居るんじゃないか? って事だ」

「あ、全国の学校に広めるってことか!?」

「ああ。この話を聞いたら、皆やりたがらないか? それに、そう言う施設は全国にある」

「良いね! やろうやろう!」


 こうして俺達、アニマルサポーターの活動は、全国規模で展開を始めた。

 最初に藤崎のホームページを完成させ、そこに詳細を記す。どちらかと言えばこれまでの目的「活動内容の告知」ではなく、これまでの事を「周知」する目的で作った。そしてそのホームページのアドレスを掲載した案内文書を作り、各高校の生徒会へ送りつけた。

 最初は都内、次に関東、関西、東北と徐々に拡大していき、その時点でもう案内文書を送る必要がなくなった。


 俺達の活動をテレビのニュースが取り上げたのだ。


 「高校生が行う、捨て犬捨て猫をなくす活動」と言うのが、とてもキャッチーで、それが全国規模で広がり始めると、SNSで噂が広がり、そのままあっという間にテレビの取材が来た。今考えてみれば、当然の成り行きだった。


 その後、俺達は「アニマルサポーター本部」に改名し、全国に支部ができていった。


 ──


「それでは、アニマルサポーター全国会議を始めます」

 藤崎は視聴覚室のマイクに向かって言った。


 俺達は各支部、高校をインターネットで結び、全国会議を行った。

 全国会議は本部である俺達のリーダー、藤崎が議長を務めていた。各地域の支部にはそれぞれの地域で活動しているアニマルサポーターのリーダーが集まり、それらの支部を結んでいる。つまり、人数だけで言うと、全国のアニマルサポーターのリーダー、五千人の会議なのである……。


「本日皆様にお集まりいただいたのは他でもありません。かねてより議題となっていた、『動物を購入した人を非難する行動』に対する処置を検討するためです」


 実はこの問題、うちの高校でも起きていた。

 「ペットを飼うなら、保護動物を引き取ろう」というこの概念が実際に広がり始めると、その逆の行動が起き始めた。「ペットショップやブリーダーから購入した人を非難する」という行動だ。これまでも、多くはないだろうが「血統書付き」を自慢するやつは居た。だが、それは非難するということではなく、ただの自慢だった。だが、状況が変わり、皆の意識が変わり始めると、その逆の行動が起き始めたのだ。

 そして、その問題は各支部から繰り返し報告されるようになり、メールで様々な議論が繰り返された。基本的には「それはいけないことだ」という意見でまとまりつつあったのだが、そうではない意見も存在し、それを無視できなくなった。無視をした場合、何も解決しないということになったのだ。

 そして、それじゃぁ、一度全員集まって会議をしようと言うことになった。なったのだが、何しろ会員数は五万人を超え、それは絶対に無理。そこでリーダーだけが集まろうということになったのだが、それでも五千人……。うちの高校の体育館にだって入り切らず、ましてや高校生が遠方からはるばるやってくるような経費だってない。そこで急遽、インターネットを使って、各支部をつなぎ、全国会議を行おうということになった。


「まず初めに、本部では『非難をすべきではない』と考えています。この考えについて採択をとります。同意の方は挙手をお願いします。各支部の代表はその結果を報告してください。北海道から」

 藤崎がそう言うと、画面の中の殆どの人が手を挙げた。八割くらいだろうか?


「北海道、賛成です」

「東北、賛成です」

「信州、賛成です」

「関東、反対です」

 そんな感じで、多くの支部から賛同が得られた。


「全支部の過半数の賛同を得ました。基本的な概念として、アニマルサポーターでは『非難をすべきではない』という方針で採択します。それではこれより、反対意見を検討します。お手元の資料をご覧ください。こちらはこれまで本部に寄せられた、反対意見をまとめたものです。代表的なものを読み上げます……」


 藤崎は代表的な反対意見を読み上げた。


「これらの意見から『悪意がない、むしろ善意による非難が起きている』と考えられます。故にこの非難行動を私達がさらに非難して良いものかが問われます。始めに言っておきますが、私の考えはNOです! 続きまして、各支部から、それぞれの支部でまとめた意見の発表をお願いします。北海道から」

『はい。北海道支部です。北海道では……』


 各支部の発表が続いた。内容をまとめるとこうだ。

 特に畜産関係の盛んな地域ではYES。非難をやめさせる行動を起こすべきだという意見。これは家が畜産業を行っており、それが避難されるとたまらないということが主な理由だった。高校生にとっては自分ではどうにも出来ない問題であり、家業への非難はそれこそどうにもならない。

 逆に都市部ではNO。非難をやめさせるべきではないという意見。これはさっきの逆で、ペットを飼うならという最初の話からどんどん発展してしまい、最終的にはベジタリアンを推奨するような話になっていた。

 いやいや、お前ら、肉は食ってませんとでも言うつもりか? 魚醤だって、鰹節だって、それこそほぼ全ての調味料には何かしらの動物のエキスが含まれてると言ってもいい。それでも自分は動物を食っていないと言えるんだろうか? と言うか、完全に話の本筋がずれている……。


 つまり、話はどんどん違う方向へ進んでいった。

 そして、代表者のマイクに、会場のやじが入り始める……。


「賛成賛成! うちの仕事に反論されてもどうしようもないもん!」

「そんな仕事なんかやめちまえ! なんで農業じゃなくて、畜産なんかやってるんだよ!」

「そうだそうだ! 農業やれよ! 農業!」


 そんな感じで、各会場は悪い意味で大いに盛り上がり、もう誰が何を言っているのかわからなくなった。


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