20.発
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あれから2日たって俺とセレンは朝から屋敷の広間にいた。これから選定戦の会場となる力場の祭壇に向かうからだ。セレンの表情ははしゃいでいる様子はなく、真剣そのものだ。どれだけ選定戦が大切かが分かる。暫くすると扉からアルゴと5人の男女が入ってくる。5人は全員髪の色が緑や薄緑で弓持ちが多い。
「2人とも準備はいいかい?選定戦ってのは会場に着いてからじゃなくここから出た段階で始まるからね。」
「道中は俺たち魔王ケルヴィ組が護衛はするがそれでも他の選定戦参加者からの妨害が無いとも限らない。」
この選定戦だけで各派閥同士の力の優劣が決まるにも同然なのだから当たり前だろう。ましてや俺は最近来たばかりの新人の様なものであり、相手からすればどんな能力を持ち、どれ程の実力なのか未知数の相手だ。妨害で無くとも偵察は確実に送り込んでくるだろう。
「まぁ、かといって神経質になっても疲れるだけだからセレンとコータはいつも通りにしてるんだよ。」
「あぁ、出来るだけ手の内は見せないさ。」
「それがいいね。」
アルゴはそう言うと俺たちにそろそろ行くよ、と言って荷物を持って出るように指示する。
俺の荷物は剣やナイフと言った戦闘系の物がメインだがほとんどが相手を騙す用の小道具程度のものだ。対してセレンは戦闘系の荷物がメイン武器の双剣だけだ。まぁ、セレンは昔から双剣スタイルらしいので知れ渡っているから騙せないらしい。確かに昔から使っていたものを急に変えるとは思えない。
谷の出口で多くの住民に見送られて俺、セレン、アルゴ、ケルヴィ組の5人、合わせて8人が出発した。
谷の外は広い草原で、ちらほらと動物の小さな群れが見える。目から見える光景だけなら平和そのものだが、見えない嫌なものをそこら中から感じ取れる。
「偵察か?」
「あぁ。何もしてこなかった辺りただの偵察だろう。…精霊の類いではないか。」
俺の呟きにケルヴィが答え、ケルヴィを含む3人がそれぞれ別の方向に向かって弓を構える。ケルヴィ組は盾役が1人、遊撃が1人、弓が3人という比較的アンバランスな組だ。だが、隠密系魔法を察知できるケルヴィ組はこう言った場面で異常なまでの力を発揮する。
「「「"ディビジョン"」」」
3人の弓から放たれた矢が一瞬で視界に入りきらないほど大量に増えた。そしてその矢は空中で小規模な爆発を起こして一瞬で消滅する。
「とりあえず周辺の魔法は全部消えましたかね。遠くのものはまだ消せてませんが。」
そう言うとケルヴィは再び弓を構えて四方八方に矢を放つ。火力が完全に弓のそれでは無いが、魔王なのだからそう言うことは気にしてはいけないのだろう。
暫くしてケルヴィ達が矢を放つのを止めると辺りの嫌な何かは完全に感じ取れ無くなっていた。全て撃ち落としたらしい。RPGゲームにおいて魔王がラスボスたる所以はこうところからなんだろうか。
「と、まぁこんな感じで道中はケルヴィ達が守ってくれるから2人は極力戦闘に参加しないようにね。」
アルゴが真面目な顔でそう言うが護衛にしては明らかにオーバースペックだ。傍目から見ればただの歩く砲台だ。まぁ、向かう先は魔王の巣窟なのでそれぐらい普通なのかも知れないが。
その日は最初の偵察以外は何事もなく、俺たちは予定していた野営地で野営用のテントを張り、一晩を過ごす事になった。
夕飯も済ませ、俺は男性陣のテントの中でクロナと2人だけになっていた。ケルヴィ組の男性陣は外の見張りに出ている。
「なぁ、クロナ。アレの調整は間に合うか?」
「うーむ、難しいじゃろうな。強引に間に合わせようと思えば出来ない事もないがのぉ。」
「刺し傷ならまだしも流石にケチャップになるのはごめんだぞ?」
クロナが唸る。
「まぁ、気長にやればいいさ。」
「そうじゃな。」
クロナは俺にそう答えると軽く微笑む。クロナはもともとキレイなのだが、この表情は何時にも増して破壊力が大きい。
「俺は寝るよ。また明日な。」
俺はそう言って寝袋の様なものに体を埋めてクロナを視界から外す。
「全く、根性が足りんのぉ。」
背中の方から小さな声でそう聞こえた気がしたが気のせいだろう。いや、気のせいであって欲しい。そう思いながら俺は眠りについた。
作者「野営とか楽しそう。」
ケルヴィ「熊とかゴブリンとか、あとたまにドラゴンとか出るぞ?」
作者「あ…遠慮します。」




