表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第0章    始まりは、1200年前です

今から1200年前、地上には人間しか存在しなかった。

少女はごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の暮らしをしていた。


だが、少女が10歳の誕生日に、それは突然起きた。




この世界には、神というものが存在する。


人間の世界を天から見守り、ある時は試し、ある時は導く存在。


そんな上位の存在が、少女を見初めた。


神の遣いを名乗る少年が家に現れたとき、少女の両親は最初驚いたものの、すぐに少女を神のもとへと行くように説得する。


この世界では、神に認められたものが次代の神となり、人類の行く末を見守る使命を引き継ぐことができるという、古より伝わる言い伝えがあったのだから。


だが、少女は言った。


「神様になんかなりたくない。私は、ここで老いて死ぬのが幸せなのだから。」







その言葉は、神の心に火をつけた。



『老いて死ぬのが幸せなら。』


『君に老いない呪いをかけてあげよう』



その日から、少女は不老となった。


翌年、身長が伸びていないことに気づいた少女は、近くを散歩していた神の遣いを捕縛し、事の詳細を知った。


自分は、10歳のまま永遠に生き続ける事。


少女のいう幸せは、永遠に訪れないこと。



少女は愕然とした。


そして同時に、ある決意をした。


「神様、ぶっ殺す。」


それから、少女は魔法の研究を始めた。


この世界には魔法という概念が存在してはいるが、一部の限られた人間にしか使うことはできず、使えてもせいぜい家事が楽になる程度の、微弱な力だった。


だが、少女には無限に等しい時間があった。


研究を始めて500年後。彼女は魔道を極めることに成功した。


そして、ふとこう思った。



不死ではないのなら、外的要因さえあれば死ねるのではないか。



事実その考えは正解で、少女は自身の魔法によって自殺に成功した。




だが、神はそれを許さなかった。



不老の呪いだけではなく、不死の加護を少女に与えた。


死の淵から蘇った少女は、一人嗤った。


これで、神を殺す準備は整った。




それから100年、少女が生まれてから610年。彼女は神を殺すことに成功した。


魔法には、練度がある。


最初は微弱な力でも、何千、何万と使うことによって精度を無限に上げていく。


それは、不老不死の彼女に最適な力だった。


神を殺してから100年後、世界に異変が起き始めた。


突然、人間以外の生命体が生まれたのだ。


最初は、不定形の小さなものだった。


だが、人間以外の存在を見たことがない者たちは、それに恐怖し、また排除しようと動いた。


そうして排除されてきたその不定形は、やがて行き着いた土地に適応するようになった。


あるものは灼熱に耐えうる体を持ち、またある者は極寒の中活動できるだけの外皮を持ち。


またあるものは鋼を取り込み、巨大な体を手に入れた。




俗にいう、魔物の誕生である。



それから少女は、500年の間、たった一人で世界を見てきた。


魔物が生まれ、魔王が生まれ、領地を広げ、人間と争い。


国が消え、また新たな国が生まれ、また滅びる。



永遠の生を持つ彼女は、次第に心がかすれていった。


存在の理由を喪った少女は、魔王領と人間界の境界線に、自分の住処を作った。


周りを認識攪乱の魔法で覆い、現世から隔離し、のどかな生活を送るための準備を進めた。


これは、そんな少女が世界の混乱を気にせずにのんびり暮らす物語である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ