聖戦士マリオン6
マリオンは急いでいた。
リフテンの聖戦を終えた聖戦士マリオン。しかしながらマリオンに休んでいる暇はない。あのような悪魔、邪天使ウリエルをいつまでも野放しにするわけにはいかぬ。速やかに王都へ帰還、あのおぞましい偽天使について神王軍本部の神託を受けねばなるまい。
マリオンは王都に向けて歩みを早めた。
「良く戻ってきたマリオン。悪魔の撃退まことに大儀である。聖戦士殿が居なければリフテンは邪神の手に堕ち、我らが民の高潔な魂が邪法で穢されていたであろう。」
「もったいなきお言葉。しかしながらあの天使の名を騙るがらくたを逃したのは全て私の不徳の致すところ。どのような神罰も甘んじてお受けしましょう。」
司令官はマリオンの働きを讃えるが、悪魔を逃した事はマリオンにとって一生の不覚。聖戦で先立っていったリフテンの同胞達に申し訳が立たぬ。
「ならばマリオン、神王教繁栄のためやってもらいたい仕事がある。神の教徒を脅かすあの悪魔はなんとしても打ち滅ぼさねばならぬが、聖戦士であるそなたの力を以てすら滅するには至らぬおぞましき存在よ。あれを完全に滅するには、わが軍も盤石の体制で挑まねばならぬ。」
邪天使ウリエルのその力、まさしく聖典に記された終末の世の悪魔である。手抜かりなどあれば、それはまさしく神に対する冒涜であろう。
「聖戦士マリオンよ、天竺に向かえ。東の仏教徒を撃ち滅ぼして後顧の憂いを断ち、奴らの血飛沫を以てウリエル討伐の号令とするのだ。」
天竺にわずかに残る仏教は神を信じぬ異質な宗教。生まれ変わりの輪廻の輪から死を以て逃れることを目指す、自殺を善しとしかねぬ気狂いの教えだ。誇り高き神王教徒の精神を汚染しかねぬ仏教徒達の歪んだ倫理感、悪魔討伐の前に障害は取り除かねばならない。
「畏まりました。聖法を何とも思わぬ不敵な教義、かねてより何とかせねばと思っていた所。聖戦士の名に懸けて、必ずや東の邪教を神の世から消し去ってご覧に入れましょう。」
邪天使ウリエルの浄化を以て、リフテンの同胞達への餞と神への贖罪を完了する。聖戦士マリオンはその第一歩として、外法仏教を浄化せしめんと東の天竺に向かうのだった。