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白の魔導書と黒の魔導師  作者: イチノリュウ
1.
3/4

1-3.山賊との遭遇

「……なぁ…妹よ」


「なぁに?お兄ちゃん」


 俺の呼びかけに疑問を返してくるのは俺が妹と呼ぶシエルである。

 シエルは白い髪をツーサイドアップにした浅葱色の瞳をした可愛らしい少女の姿をしているが、正体は俺が有する白の魔導書である。


「どうしてこうなった」


 俺の前に死屍累々と積み上げられた人間の山。

 死屍累々というと死んでいるみたいに思うかもしれないがかろうじて生きている。

 そんな山を見て俺はそれしか言えなかった。





 異世界に転移したことで念願の面白そうな現実を手にし、シエルとの当面の話し合いを終えて、魔導師について歩きながらの説明を受けていた。


 魔導師とは、魔法を操る素質と魔力を持ち、魔導図書館より与えられた魔導書に記録された魔法を行使する者である。


 魔法の種類は色によって区分される。

 火の魔法は赤系統、水の魔法は青系統、雷の魔法は黄系統、なんていうありふれた感じで系統は主に六系統(赤・青・黄・緑・紫・水)である。

 ちなみに、土魔法はない。黄系統は雷、電気を扱えるので磁場を操作することで土を間接的に操る事は可能だそうだ。


 魔導書には色がついていて、その魔導書と使える魔法の系統は対応しており、例えば、オレンジの魔導書だと赤系統と黄系統の魔法を扱える。

 また、同じ色でも明度の違う魔導書もある。


 なら白の魔導書は何系統の魔法を扱えるのか?と質問を投げかけたところに邪魔が入る。


 シエルと森の中を話しながら歩いている途中で道を発見し、その道沿いを歩いていた。

 邪魔者達は道を塞ぐよう前に現れてから、次々と四方八方を取り囲むように現れる。


「へへっ、いい身なりの服着てるぜコイツラ、上物のカモだぜ!」


 そんな三下の台詞を聞いて、あぁ山賊かと納得し、シエルにどうするか聞こうと横を向くと…


「『爆発(エクスプロージョン)』!」


 突如、前方から聞こえる爆発音。


「『竜巻(トルネード)』!」


 巻き起こる風と空に吸い込まれる人。


「『水ノ緩衝(アクアクッション)』!」


 空から降ってくる人間を受け止めるような、水責めにあってると言えなくもなくような感じで積み上がる人の山。俺以外の全ての人間が積み上がると破裂し、地面に溶け込む水。


 そして、冒頭に至る、どうしてこうなった。


「お兄ちゃん、白は全ての色の中心でこんな風に六系統全部使えるんだよ!すごいでしょ〜」


 俺の疑問に答えて、なおかつ、自分の凄さを見せつけて褒めて褒めて、という感じを出すシエル。

確かに、凄いのだろう。チートもいいところだ。しかし、手出すの早くね?という事と疑問に思う所が一つ増えた。


「妹よ…俺は必要か?」


「?…どう意味?お兄ちゃん」


「いや、魔法使ってたのシエルで俺は何もしてないじゃん」


「そんなことないよ〜、私が魔法を使うための魔力の供給源はお兄ちゃんだから」


(えっ!俺ってエネルギータンク!?)


「俺って何?」


 恐る恐る質問してみた。ここで魔力電池的なこと言われたらどうしよう。


「私のマスターでお兄ちゃんで魔導師だよ」


(まぁ、いいか。)


 まだまだ知らなければならないこともあるし、おいおい聞いていけばいいことである。


 さて、今、率先してやるべきことはひとつ。

 誰でもいいのだが目に付いた三下の台詞を言った奴(以下、三下)を山の中から引っこ抜きビンタして起こす。三下は周りの状況と山になってる仲間を見て思い出し、恐怖に顔を歪める。そんな顔を見て気の毒だとは思うが、仕掛けてきたのはそっちなのだからと容赦なしに要求することにする。


「おいっ、地図を持ってたら渡せ」


「ひぇっ!ちっ…ちず?…地図でも何でも渡しますからどうか命は取らないでください!お願いします!」


 そう言いながら土下座してくる三下。

 どんだけ怖いんだよ、と思ったが、爆発起きて突風に巻き込まれて水の中落ちたらさすがに誰でも怖いなと思い直し、チラッとシエルの方を見る。

 何を思ったのかシエルはニコッと笑顔を向けてくる。


「見逃してやるから、さっさと地図出して」


 慌てて仲間の腰に巻いてあった地図を取り、渡してくる。濡れているが折れ目がないから安心した。折れ目があると破けやすいからな。

 さて、行き先は決まった。


「行くぞ、妹よ」


「うん!お兄ちゃん!」


 そんな感じで異世界初の山賊との遭遇であった。



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