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外枠シナリオ 『素直になれない人魚姫』

 アタシは気づいたら城井のことが好きだった。莉奈がアイツに恋をしていたのはよく知っていたけれど不明確なアタシの思いは燃え続けていたようだ。アタシ自身が当惑した程に城井を取られることに心的負荷がかかったのだろう。体中に熱が広がり、あのキスマークを目にしたアタシは怒りと悲しみで何をしているのか解らなくなってしまった。

 ……結果。莉奈を傷つけた。さらに、城井の……いつもなにを考えているか解りにくいアイツの怒った顔を見た。城井のどこに惹かれるか。アタシ自身も解らなかったのだろう。それを実感したのは莉奈へ城井をけしかけた時。心配でアタシは二人をつけていたのだ。アイツ、城井は何を考えているか解りにくいだけで実際はかなり深く考えている人でアタシのことも考えてくれていた。


「朱里ぃ。あんた、まさかとは思うけどさ。城井のこと好きなの?」

「え?」

「だって、最近はよく一緒に居るじゃん」


 解ってる。アイツにとってのお姫様は莉奈なのだ。こんながさつで自立できていない上に可愛くない女は見向きもされないのだろう。そんなアタシの反抗だった。小さくて華奢で色白な莉奈に憧れていた。アタシは確かに普通ではあるけれどそれ以上でも以下でもない。あの子のように可愛くなりたくて……彼に見て欲しい。どうしたらいいんだろう。

 女子の友達は城井と莉奈の関係を知っているから聞けない。誰かに相談したくても……。


「へぇ、アンタも可愛いとこあるじゃない」

「やめてください。……正直、不毛なのはわか……いだっ!!」

「アタシからのアドバイス。まずはそのアンタらしくないとこ直しな。でも、悩みがあるから聴いて欲しいか。嬉しい限りだけどさ。やることは一つよ。努力あるのみ。インハイでれたアンタなら行けるよ。朱里」


 先輩に話を聞いてもらった。直後にアタシの弱音は完膚無きまでに叩き潰された。そして、まさかセクハラを受けるとは……。女子水泳部の先輩に話を聞いてもらい。アタシは少し軽くなった悩みをアタシなりにすり潰すための考えを回す。

 たぶん、この人はアタシが言う好きな人と言うのが解っているのだ。ニヤニヤしながら考えているようだが……。この人は頼れるけれど人を弄る癖がある。


「城井かぁ。そのマーベラスボディで誘惑したらイチコロな気がするんだけどねぇ」

「城井に色仕掛けは効かないですよ。ロリコンだし」

「へぇ。城井ってロリコンなんだ。でもさぁ、男って欲には勝てないと思うよ?」

「……『アイツに欲ってあるのかなぁ』」

「欲はあると思うよ。彼はかなり頭の回転が速い。分析や取捨選択が上手いし」

「そうですか……って心を読まないで下さい!」


 体を乗り出していた。今まで一人の人物にここまで執着はしてこなかったのに。アイツは優しい。誰も傷つけないように足取りを組……下手をしたら親友を、一緒に彼までもを殺してしまうようなことをしでかしたアタシを許してくれたのだから。

 踏ん切りがつけられない小さなアタシではこのように遠巻きから見守ってくれる人を捕まえるのは難しい。いいや、捕まえようとして今までの関係が壊れるのがたえられないだけなんだ。アイツのようにアタシも周囲と上手くやりたいし、気持ちを伝えたい。


「城井はさぁ。アイツはアイツで考えちゃうから余計にやりにくいのよね。男ならもっと単純でいいのにね」

「そうですね」

「アンタは素直になりな。城井はさ、鈍いから」


 先輩に頭を撫でられながら小さく頷いた。莉奈の出した提案が元でアタシはどうなるのか……解らない。でも、アタシはアタシの道を行く。素直に……なれるかなぁ。

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