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外枠シナリオ 『人見知り王子様と卑しい私』

 やっと寝てくれた。

 彼がどの様な人か……。それはよくわかって居なかった。でも、本能とかそう言う部分で私は彼が好きになっていたんです。一目ぼれってみなさんは信じますか? 私はありだと思うんです。相手のことを探るのもまた恋愛。それで破局してしまうのも運命。ロマンチックなことばかりではないけれどそれも人生といいますか、してきたことの一つになるんです。

 私は…入学式の時に私を助けてくれた彼を本当に好きで好きで仕方なくて……。友達にこんな引っ込み思案で弱い私を押してもらいながらなんとか辿り着いたという構図になっています。彼も割と小柄な人なんだけれどけっこう逞しい体つきだった。肉付きが薄くて筋肉質……。とにかく私は彼の部屋で、今、熟睡している彼の目の前にいます。


『な、生。生寝顔……』


 大学三年生となった私は最近の急接近に戸惑う……と思っていた。夏休みで変わろうと考えていたけれど城井君は彼の外側に無言の囲いを備えていて簡単には近づけないようになっている。……近づかないで欲しいというオーラというか空気が滲んでいるのです。

 そんな彼との二人きりのお出かけは……予想外の事態から発生しました。男性としては頼りないように見えた理由は彼は無理強いをせずに無難な方向性を外側へ向けているからです。堅実とは少し違い彼は上向きな指向性を周りへ見せない…そんなところがあってか誰も深くは触れたがらなかったらしい。


『ね、寝顔写メゲット……』


 こそこそしているのは彼に見つかって嫌われるのが嫌だから。確かに人見知りは激しいしかなり疑り深いために彼は周りとは上手く打ち解けることができないのでしょう。……でも、彼は信用した人に対してはかなり心を開いてくれる。私もその一人になり、次はもっと親い存在になりたいと考えています。

 城井君……。

 私は引っ込み思案で決断力と推しに欠ける性格を理解している。彼も彼本人からは強くアプローチをかけてこない性格をしていることもよく理解していました。だから、……朱里ちゃんに背を押してもらいながらというのが。


『お、起きないよね?』


 頬をつついても彼は起きないようで…下心が前へ出始めた。城井君からは畳のような香りがする。彼の目の前に居るため下手に動けないけれど体は少し前進した。

 気持ちの面では違うのに体は動く。本能的な物らしい。私は彼を求めていて……好きで好きで仕方がないらしい。我慢できない。何度もこんなことはあったけれど今はここで彼と二人きりである。彼がケダモノならもっと簡単なのに『既成事実』。


『ほっぺくらいならいいよね?』


 頬に一回、そして、私のいけないところが出てしまう。調子に乗ってしまい止まらない所。できるとわかってしまうとどんどん手を出してしまう。『欲』に従順なのだ。こちらが本当の私……。でも、引っ込み思案でシャイでお惚けさんなのも本当で、手が出る時だけしか出せない。それがこういう所だからだ。

 いい香り、城井君の香り…もうダメ止まらない。我慢できない。誰にでも見せたくない一面くらいあるだろう。これが私のそれだ。…これがあるから私は多少のことでは驚かない。城井君がどんな人でも驚かない自信がある。


『柔らかい…気持ちいい』


 唇にキスをしてしまうと止まらなくて二度、三度と続けてしまう。あぁ、止めなくちゃ。でも、癖になっちゃう。我に帰るのは決まって何かが起こってからだ。私は…面倒なことをしてしまった。私が今日、ここに泊まっていることを知っているのは朱里ちゃんと数人の女の子の友達、そして、本人の城井君…悠染君だけだ。彼の見えない所、首の付け根の部分で襟首になりやすいところにまさかキスマークを残してしまうとは思いもよらなかった。気づいてなんとかしようと思ったけれど手遅れだ。キスマークは内出血に近い。それをすぐに消すのは…無理。


『しまったァ……。また、やっちゃったよ』


 午前三時を過ぎ、私は悠染君のベッドの上で悶々とひとりでうずくまったいた。今も鼓動は大きく耳まで熱い。体温も上がっているから本当に暑い。携帯で時間を見ていると……。午前五時に彼のアラームがなって彼が起きだした。そして、私が寝ている物だと思って音を立てないように彼の準備をして五時半に私を起こしてくれる。集合時間は六時に彼のアパートの駐車場である。


「おはよう、度会」

「お、おはようございます」

「早めに着替えた方がいいかもね」

「う、うん『バレてない?』」


 このあと、このキスマークがあらぬ騒動を巻き起こすなんて私は考えもしなかった。

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