第二話 使い捨て
ありがとうございますww
「いい作戦でしたねぇ」
「ああ、傭兵達に悪いが、ここで死んでもらう」
「だから、ギルド側にはこのこと言ったなかったんですね」
「ギルドに所属させている奴らだと後々面倒なことになるからな」
連合軍は薄くなった敵防衛線を突破し、敵本陣に近づいていた。
馬に乗った痩せている男とその臣下はコソコソと話していた。
他の兵達には傭兵達が何処で戦っているのか、何故自分達はこんなにも容易に進めているかなど、詳細は報告されていなかった。
「兵にはこの事を言うなよ。こんな作戦司令部にでも知られてみれば死刑だ」
「はい、肝に銘じておきます」
「しかし、司令部も司令部で無能だな。司令部と傭兵に知らした作戦が偽の作戦だなんて知らずに進めるとは・・・」
「司令部にも隊長のコネがまわっていますからね」
ヒソヒソしている二人を見ながら兵達は疑問に思ってたが、彼らが立てた作戦でここまで殆ど無傷で来ているのだ。
しかし、これが傭兵達のおかげとは誰も思っていなかった。
傭兵部隊は殆ど全滅状態。敵の攻撃の前に次々と死んでいく者達が俺の目に映った。
陣形も数時間あれば崩壊し、生き残っている者達も逃げようとしていが、背後からの攻撃を受けている。最低最悪の状況だった。
俺は数人の傭兵と一緒に逃げ、安全だと思われる場所で休憩していた。
「くそっ!どうなってやがる。敵は情報よりも多いし、味方もこねぇ」
「味方もかなり追撃されていますね。正直、動けるのは僕達だけのようです」
さっき知り合った金髪の短髪ラルフとメガネのガトラが状況を分析する。
「ユウト、お前は何か分かることはあるか?」
茶色の髪で逆立っているラドが言う。
「いや、正直何も分からない。ただ、作戦は失敗したってことぐらいだ。どのみち、ここから出るのはかなり難しそうだ」
この男四人がすぐさま連携して、戦闘地域から逃れたメンバーである。さっき、お互いのことは面倒だから名前で呼び合うことにした。
「体力の温存も大切だろう。ここは、静かにここで待機しよう」
ガトラが言う。
それに俺達は、
「確かになぁ。下手に動いて敵に見つかれば厄介だ」
「ああ、俺もそれには賛成する」
俺もこくりと頷いた。
時刻は夕方になり、木々の間からオレンジの光が差し込む。胸に着けていた金具を外し、もう少し身軽になれるように調整をした。
置いていたマントをもう一度着用する。
「おい、敵が来るぞ」
「なっ!」
面倒なことになった。
「奴らは俺達にまだ気づいていない。木の上に登ってやり過ごそう」
「分かった」
俺達は各自一本の木の上に登り始めた。
数分もすればオークとガルムの先行隊が見えた。
奴らが通り過ぎるのをジッと待つ。
「くんくん・・・近くに人間がいるなぁ」
オークが言う。
「近いぞぉ、何処かに残りがいるぞ!」
「探せ!血祭だ!」
と、しまったと思った時だった。
「おい!本陣に人間共が近づいているぞ!」
「何だと!行くぞ!」
そう言ってオークとガルムは反転して戻って行った。
「おい、あいつらの話聞いたか?」
ラドが言う。それにラルフは答えた。
「軍は俺達を見捨てたんだ」
「なるほど、この際傭兵達には全滅してもらい、敵の目がこちらに来ているうちに敵のボスを倒そう。と言う訳ですね」
ガトラが整理する。
「待て待て、そうと決まった訳じゃないだろう。万が一に、連合軍が敵本陣にこのまま攻撃を仕掛けるのだとしたら、ここにいる部隊との背後からの奇襲を喰らうことになるぞ」
ラドは言う。
「んなこと知るか。俺達は捨て駒にされたんだぞ」
「確かにそうですね。僕達はほぼ全滅です。それに、僕達四人が行ったところでどうにもならない問題です」
「はぁ・・・・やっぱそれが普通の判断だよな」
俺は奴らが去って行った方角を見ていた。
そうだ。俺達を切り捨てた奴らを助ける必要などない。それに、俺はこの戦いで生きることを目標にしている。
どんな結果であれ、俺は生きて帰る。
「それじゅぁ、さっさと帰ろうぜ。あいつらがどうなろうと知ったことじゃない」
ガトラ、ラド、ラルフは森から出て行こうとした。
俺が立ち止って言った。
「そうか。俺の悪い癖だ。お前らとはここまでだ。じゃぁな」
「ユウト!」
そう言って俺は反対方向に向かって走り始めた。
後ろを振り返らず、さっきの敵部隊を追いかける。
「くそっ、普通に考えれば森の奥だよな」
俺は槍を構え、森の奥へと進行する。すると、大きな爆音や叫び声が聞こえる。
「近いな・・・・」
「隊列を乱すな!落ち着いて対処しろ!」
連合軍は背後からの奇襲と魔道士の凄まじい魔法の前に進行が阻まれていた。
「隊長!敵の増援です。背後にも迫っています」
「司令部とはまだ連絡がつかないのか!」
後ろの通信兵は首を横に振る。
「妨害魔法が張られているのか」
「まだだ!数はこっちの方が多い!傭兵のおかげで数が減っている筈だ!」
連合軍が直ぐに立て直し、迎撃態勢が整った時だった。
空中から炎が舞い、兵士達を焼き尽くした。
「新たな敵を確認!キ、キメラです!」
そこには体長六メートルぐらいの巨大なキメラが空から現れた。前衛の兵を蹴散らし、防衛線に穴を開けることになってしまった。
「はぁっ!」
勇敢な兵達が槍を持って突撃するが、次々と炎や前脚で胴を引き裂かれたり、首を跳ねられたり、炭の塊になった。
「囲んで魔法を打て!」
「行くぞっ!」
魔道士達は散開して一斉に魔法を発動させるがキメラの前では空気を撫でるかのように掻き消された。
「くそっ!もっと!もっと強い魔法を!」
魔道士達は上級魔法を放とうとするが、詠唱に時間が掛かり、その間に次々と殺されていった。魔道士の盾になっていた兵達も薙ぎ倒され、キメラ一体に部隊は崩れ始めた。
その崩れた部隊に向かってガルムの奇襲部隊が突撃して来た。
それが切っ掛けとなり、連合軍は崩れ始めた。
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ありがとうございました!