第四話 修行
ありがとうございます。
「ほら、もっと腰を低くして、体制を整えろ。そして、目標に向かって思い切り突き出す」
「ふんっ!」
太陽が真上に近づいた時、俺はケイジさんから貰った槍で空を貫いていた。
「よーし、そんなもんでいいだろう。一旦、休憩にしよう」
「はい」
俺は槍を置いて、木の椅子に座る。
「ふぅ」
すると、セバスチャンが昼食のサンドイッチを持って来てくれた。それを美味しく頂き、紅茶を啜る。
すると、ケイジさんは立ち上がった。
「んじゃ、午後は自由にしたらいいさ。俺はちょっと仕事に行って来る」
「また、魔王軍の残党ですか?」
「ああ、そいつらの今後の対策会議だな。元帥四人いないと委員会が始めてくれないんだよ。まぁ、他の三人もそのうち紹介してやるよ」
そう手をブラブラと振りながら行ってしまった。
俺は水を飲み干すと、槍を再び掴んで突き始めた。
そうして、一時間程時間が過ぎた時だった。
セバスチャンが槍を片手にやって来た。
「稽古が必要でしたら、私が相手になりましょう。何事にも相手がいないとダメでしょう」
「いや、流石にあなたには頼めませんよ」
すると、セバスチャンの目が光り、
「おやおや、ただの爺だと思っては困りますよ」
微かだが殺気を感じる。
以前の俺なら無神経過ぎて感じられていなかっただろう。だが、この修行が始まってから一週間が過ぎた時である。
俺も武人としての基礎が成り立ってきている証拠だ。
「分かりました。では、お願いします」
そうしてセバスチャンは槍を持って走って来た。どちらの槍も突くだけに特化した集団戦で使う槍ではなく、突く、斬るの両方を兼ね備えた個人で勝手に暴れる槍である。
「ほおっ!」
セバスチャンの動きはかなりキレのある動きであった。一撃一撃も力強く、ステップもかなり素早い。
「俺だって!」
突き出して来た槍を受け流し、懐に飛び込んだ。そのまま刃がない方でセバスチャンの腹を突いた。
「や、やりますなぁ」
「あなたこそ」
俺とセバスチャンは同時に地面を蹴った。
修行を始めて一ヶ月が経った。
「よし、そろそろ次のステップにいってもいいな」
「次のステップですか?」
すると、師匠は右手を突き出した。何やらブツブツと言った後に炎の球を放った。
「ほぇぇぇぇ」
魔法かぁ。
「次は魔法を使っての戦闘だ」
師匠の言う通り体全体の魔力を掌に集中させようとするが、集まったと思った瞬間弾ける。
何度も何度もやってみるが、あまり良い成果は出なかった。
「くそぉ、俺才能ないのかなぁ」
「魔力ってのは鍛練や修行で徐々に身に付くものだが、それでも個人によって限界はある。それでも、才能の有無で魔法が使えないことがない。ただ、武術を鍛えれば精神が鍛えられない。精神を鍛えれば、武術を鍛えられない。その両立こそがこれから先一番大事になってくるもんなんだ」
なるほど。なるほど。
「だから、お前はお前のペースでやればいい。別に俺のマネをする必要はない。お前の戦い方を作り出せばいいんだ」
俺の戦い方かぁ。
槍・・・槍?
そもそも何で槍なんだ?こういうのって、普通剣とかの方じゃね?
「う~ん」
槍が俺に合ってると思ったから?初めに持った武器が槍だったから?
「分かんねぇ」
「そう、難しく考えるな」
師匠の言う通りだ。
難しく考えるな。
「槍が使いたいから」
使いやすいから。
の一つに過ぎなかった。
次の日。師匠は三日も泊まりで仕事があると言って出発した。
俺は自主鍛錬をしていろというのを言われた。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
右手に全身の魔力を集中させるが、何故だか集まった瞬間弾ける。
俺は意地になって一日中それを繰り返した。その結果。
「ぬはっ・・・・・死ぬ・・・・」
「魔力の使い過ぎです。もっと、効率よく使わないといけません」
そう言って目の前に料理を出してくれる。
俺は残りの体力で食べ終えると、ベットに潜り込んだ。
「魔法かぁ・・・・・どうしたもんか」
例えば魔法を使わない。
己の肉体と槍のみで戦う。これはこれでカッコいい。
例えば意地でも魔法を覚える。
己の肉体と魔法のみで戦う。カッコいい。
こういうのって、普通神様的なのが登場して、力を譲渡してくれるもんじゃねーのかよ。
「はぁ」
ため息を吐く。
師匠が言った言葉が聞こえる。
「両立か・・・・」
やってみる価値はあるのか?
武術と魔法。
難しいとも言っていたな・・・・。
「ふっ、俺に出来ないことなどない。やってやるさ」
俺は天井に拳を突き上げ、意気揚々と宣言するのであった。
次回も宜しくお願いします!!