自由人とは私のこと
菜々子は女の子らしい。
肩くらいまでのおろした髪はふわふわで、雰囲気はおっとりしているが、頭が冴えている。
現実的で意見が的確。菜々子がどんな子かと聞かれたらそう答えるだろう。
陽子のお姉さんらしい容姿に対し、菜々子は妹っぽい感じだ。
だけどちゃんと女性らしい雰囲気は持っている、私なんかより素敵な人だと思う。
菜々子のお父さんは社長さんで、お母さんは厳しくて、怒ってばっかなのに綺麗で、最後は抱き締めてあげる──、そんな良いお母さんがいるという印象も強い。
母さんも素敵な人だ。
家事、子育て、仕事、人格。
子供は親を見て育つとよく言うけれど(まさしく菜々子がそうである)。
私はあんな立派な母親がいるのに、──いつまでフリーターなんだろう。
「…で、カンちゃんは結婚願望あるんだよね?」
菜々子が私の顔色を伺う。
「え、…あ、あぁ、うん」
実に曖昧すぎる。不安定にうなずいた。
「カンちゃんはいいダンナ見つかるんだろうな」
ほんわかした口調で菜々子が言うので、つい微笑んでしまう。
それと反対にこのままが続くのもナイんじゃない?とも聞こえる。考えすぎかも知れないが、私も就職しなきゃいけないんだな、と頭では分かっている。
「まぁね。菜々子はどうなの?」
「順調よ」
全てを一言で片付けた菜々子をうらやましく思った。
「マジで?」
「男はキープ中だし、お仕事もうまくいってる。おかげさまで」
菜々子はニッと笑って、ピースをとった。
「良いなぁ」
私は言った。本音である。
その後、ファミレスのハンバーグを食べながら、話に花が咲いた。本当に菜々子は良いコだなぁ、と改めて思った。
将来に関しても、自分に対してもしっかり考えを持っていて、まるで非がないといっても過言じゃないな、と感じた。
家では守が待機しているので、安心しきっていた。