姉弟
ボーっとしていると、鍵を開ける音が聞こえた。
誰か帰ってきたようだ。
「ただいま」
弟だった。弟の守は高1の派手な方でイケてるらしい。(もちろん友達談)。
「守、朝帰り?」
ソファから飛び起きると守が即座にツッコむ。
「ねぇちゃんもだろ」
「うっさいな」
あ、そうか、と思った。
「って牛乳ないし」
冷蔵庫をさっそく開く守が舌打ちをする。
「知らんわ。で、彼女と上手くいってるんだ」
「うっさいな」
守は私がついさっき言った口調で真似した。
「何よ」
可愛くない弟ね、と思いながら再びソファに倒れ込む。
「母さんいないね」
守が麦茶を飲み干して言った。
「…そうだね」
私も思っていた所だった。
「俺らと同じことしてたりして」んなわけねぇな、と守が1人で笑う。
「えっ?まさか昨夜からいないの?」
てっきり、早朝に出掛けたのかと。
「多分な」
「確かに、電話も来てないし…」
いつもなら、帰らない日は電話がかかってくるはずだ。
「マジかよ」
守は平常を装っていたようだが、声色が焦っていた。
「もしかして守も電話来てない?」
「ああ。ねぇちゃんに来てたんじゃないのかよ?」
「メールすら来てないわよ」
顔を見合わせる。
「とっとにかく、いま電話してみようぜ」
「うん」
守が携帯を開く。私は守の隣に行って、通話を聞こうと思った。
プルルルル…
なかなか出ない。
「なあ、もしかして…」
守が急いで寝室に向かう。
「どうしたの──」
母さんの携帯がポツンとベッドの上に置いてあった。