表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂糖と雑巾  作者: お空
5/24

キャラメルはお断り

しかし、そいつの正体が分からない。

誰だろう、こんなことをするのは。隼人だったらかろうじて許してあげようか。

そんなことを思っているとそいつが、やっと顔を離した。

それなのにまだ私の口内には大嫌いな味が残っている。

舌ではなかった。

じゃあ、何だろう。

いくつもの疑問が浮かび上がる中、それは食べ物だと分かった。


そいつの顔が見えた。

綺麗な長髪。

胸元のネックレス。

そいつは、ふっと微笑んだ。

笑うと意外に幼い顔。

美しい女性。


──陽子だった。


「カンナ」

陽子は私の名前を呼んだ。

私の内ももにスラッとした白い手が置かれていた。そのことについては気にならなかった。口の中に含まれている甘い物を一刻も早くどうにかして欲しい。


「えっ──」


「カンナ」

目を開けると、隼人がいた。

「陽子?」

何が起きたのか分からない。

私は陽子を探した。

「ちげぇよ」

隼人しかいなかった。

寝ぼけすぎ、と隼人は笑う。

夢…、かぁ。久しぶりに見た。

「あ…隼人だ」

よく見ると、というか上半身裸だった。そうか、あの後私は寝ていたんだ。全てを理解できた。

「俺だよ」

また隼人はバカにして笑う。

「もう」

そうは言いながらも嬉しかった。…夢で良かった。

「カンナは可愛いな」

「だから…」

言いかけた時、隼人は私を抱き寄せキスをした。


キスの後、隼人の上半身を見た。ふと窓を見てみる。

空は青い。嫌になるほど平和空だった。しばらく空を眺めた。隼人は服を着ようとしていた。


──って朝じゃん!


マジかよ。時計は7時を指していた。

「モロ朝帰り…」

呆然とする私を隼人がギュッとする。

「良いじゃん、初朝帰り」

「うん…」


家に帰ると、鍵が閉まっていた。わー、わー、どうなるんだろう、などと思ってみる。

誰もいなかった。良かった。

隼人の家での不安さが馬鹿みたいだ。

何で不在なのかは深く考えないことにした。すぐ帰ってくる気がしたからだ。昨夜帰らなかった言い訳を考えようとした。

リビングの白いソファにドサッと倒れ込む。

この感じ、やっぱり我が家。

ピカピカのフローリングにハンドバッグをテキトーに置く。

あの夢を思い出してしまった。

言い訳よりもあの夢のことについて自問自答させ、二度と思い出さないようにしよう。

このままじゃ、あの夢を思い出す度可憐な陽子と会話が弾まなくなりそうだ。

目を閉じてみる。

 陽子が、私にキスをして、キャラメルを口移しする──。手の位置も何だかいやらしい意味が込められている気がした。

まだ興奮状態な頭を整理させて、分かったことが1つ。


あの甘いやつはキャラメル。

おえっ…最悪。

夢にしては味を鮮明に覚えている。よほど衝撃的だったのだろう。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ