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砂糖と雑巾  作者: お空
2/24

甘さは求めない2

「ここの店良いね」

私が連れてきた喫茶店は、“優香”という小さな店を陽子は気に入ったようだった。

「そうかな?ケーキ食べないから分かんないけど、私は好きだよ。ここの店」

コーヒー(もちろんブラック。ミルクなど入れない)はかなりレベルが高いと思う。

「だよね」

陽子がふっと笑う。長い髪は今日も枝毛なく美しい。胸元の小さなネックレスは彼女の艶かしい肌に映えて、大人っぽさを演出している。その反面、顔や言動はちょっと幼い。まだ反抗期をぬけてないような──。

「ウチになんかついてる?」

ハッと我に返る。

私は、陽子にうっとりしてしまった。

「ついてる」

「うそっ!」

陽子が鏡を取り出す。

「嘘」

「もぉー」

私なんかより、陽子は百倍、良い女だなと思う。こんな、肩にタトゥーシールを貼ってるような私なんて足元にも及ばなさすぎる。

ヒールがいくら高くても、陽子には届かない。


雑談に花が咲いてると、若い男性のスタッフが私たちのテーブルに来た。


陽子が不思議な顔をする。あどけなくて、また私の心を締め付ける。


「店長から、特別にデザートをどうぞ」

若いスタッフは言う。結構カッコイイ。バイトだろうか。茶髪の髪は今どきっぽくて、鼻が高い。

唇がセクシーで吸い寄せられそうだ。

「本当ですか!ありがとうございます」

嬉しそうに陽子がお礼をした。

私は足を組かえて、デザートを眺める。

餅、だ。

若いスタッフが去ったのを確かめて、私と陽子は目を合わせる。

「ぶっ…餅…」

吹き出す陽子を見て私も口を押さえて笑う。

それは、白い皿に丸餅が二つ乗っていた。醤油で焼いてあるようだった。


私は、小さな店内を見回した。

厨房に繋がる入口の方から、熱い視線を感じた。


「カ・ン・ナ」

男の人は唇だけ動かして、私にあたたかい微笑みを送る。

キュン、と胸が弾む。

苦しいと私の脳は訴える。

幸せにまみれて、甘いものを嫌う、私の脳が。


その男の人に笑顔を返した。

「どうしたの?」

陽子が私を見る。

「ううん。なんでもない」

「そっか」

「うん」

「カンナ餅食べる?っていうか餅は食べれるの?」


「うん!食べる」


店長から特別に頂いた餅を見て笑みがこぼれる。

この店の店長は、──私の大切な人で、彼氏である。





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