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砂糖と雑巾  作者: お空
14/24

女心からのピンチ

今回、ちょっと長くなりました。

私は、隼人の家の前にいた。

203と彫られている。

ずいぶん前から彫られていたようだ。


私はカバンから合鍵を取り出した。


この前、菜々子に電話した後、すぐに隼人にメールをした。

電話だと上手くしゃべれる自信がなかったからだ。


「隼人いま忙しい?会いたいよ~」

という内容で送った。


返信だけは相変わらず早く、

「ゴメンなぁ、バイト中(汗)」

予想通りの返事だった。


「合鍵作っちゃダメ?私、このままじゃ不安で死んじゃいそう」

送った後少し無理があるな、と思ったけど仕方ない。


「合鍵かぁ」

と隼人は困っているようだった。だからと言って言い訳も思いついていないみたいだ。

 返信しなければいい話を、彼女彼氏の縛りが邪魔して返信はしてくれている、そう解釈した。


「ダメな理由があるの…?」

わざと5分遅れて送信する。


「あるわけないだろ。カンナだけ愛してるんだから」

私の胸が苦しくなる。

複雑な思いを抱えながらこう返信した。

「ありがとう!じゃあ、合鍵作るね?」


それから2回ぐらい、隼人に会った。セックスはしなかった。それどころかキスも、愛の言葉すら交わしていない。

 隼人は戸惑っていたようだけど私はあえて無視した。

ただ鍵の用件だけを話して帰った。




そんなこんなで、私は隼人の家の合鍵を持っている。

堂々と鍵を差し込み、中に入った。


目的、それは“証拠”を見つけるためだ。

もしかしたら隼人は菜々子以外にも浮気をしているかも知れない。 それと、浮気の件に関してもっと知りたい気持ちもあった。

 相手がどんな女のコなのか。

相手からどんなプレゼントをもらっているのか。

 多分、証拠隠滅しているだろう。私が隼人の家に呼ばれるということはやましい物がない自信が溢れているからなんじゃないか。

 考えながら私は一番にベッドの下をチェックした。

何もない。


菜々子と隼人は間違いなくこのベッドで──。

泣きたくなる気持ちを我慢して、タンスを開けた。

 女のコがいるような雰囲気は全くない。


何度も来ている隼人の家も、何だか初めてくるようだった。


机の上には6個のラッピングされているお菓子らしき物がおいてある。

どれも可愛いラッピングだった。1つ手にとってみた。

その中はマフィンとかいうお菓子だった。

どっかで見たことあるような──。


疑問を感じながら他の所を探索する。女のコの私物の1つでも落ちていたら、隼人と別れる道も視野に入れようと決心していた。


隼人のことは好きだ。

本当に愛している。


だけどこのままじゃ私は一生、浮気する隼人を追いかけなければならない。

そんなの、幸せを感じれない。

第一、私はまだ若い。

フリーターだし、まだまだこれからなのだ。

「浮気する彼氏」というレッテルが頭の中で回る。


目を閉じてみる。

落ち着かない。

やっぱり隼人しか愛せない気がした。

ずっと一緒にいたいと思った。


だけど、隼人は私じゃ足りない。私が魅力不足らしい。


浮気相手の魅力に私は勝てるんだろうか。


もう一度、ベッドの下を確認した。仕方ないからエロ本でも見つかればいいんだけど。


さっきは気づかなかったけど、奥の方に何かある。

手を伸ばしてみる。


それは何だか冷たかった。


ベッドの下から出してみると、それは小さな金庫だった。

お金が入っているんだろう。


一体、いくらくらい稼いでいるんだろうか。


気になった。

それは私がフリーターだからかも知れない。


開けようとするけど、開かない。ロックがかかっている。

三桁の番号。

すぐに隼人の誕生日、315に会わせてみる。

違うようだ。

私の誕生日は四桁だから、論外である。


彼氏の稼ぎに対してこんなに必死な彼女こそ論外なのかも知れないが。


15分くらい経っただろうか。

適当にいじっていると、開いた。その間、随分時間が長く感じた。

開けた瞬間だった。

ガチャガチャ、という音が響いた。


隼人が帰ってきたのだろうか。

しかし今の時間は“優香”で働いている筈だ(それを見計らって、侵入したのだから)。


合鍵で勝手に入るのはあり得ない気がしてきた。

普通、許可をとって入るのでは──。


考えてる暇はなかった。

反射的に、押し入れの中に隠れた。

押し入れなんて、何年ぶりに入っただろう?多分、小学生の時にかくれんぼで入ったっきりだ。


押し入れの中は、当然暗い。

真っ暗で何も見えない。


バタン、と音がした後、カチャ、という音がした。

どうやらドアを閉めて鍵もかけたらしい。


息を潜める。

緊張と好奇心が体を走る。

押し入れの中の暗さにも慣れてきた。


その時、 部屋に入ってきた侵入者が女だと分かった。

靴の音がヒールだったからだ。

侵入者は鍵に鈴をつけているらしく、その鈴の音がまた憎たらしい。


誰?

その思いが強まる。


一体、なぜ隼人の家に来ているんだろうか。

もしかして隼人がこれから来る、とか。

そうなれば押し入れにいる時間は長くなるだろう。


女はベッドの上に座ったようだ。ボスッ、と寝転がる音がそうだった。


一体誰?

女と分かり、余計また鼓動が高くなる。


ふすまを三センチ開けようとした。大丈夫だ、多分。


ほんの少し開けた。

開けるまでいかないくらいに。


ベッドから足がはみでている部分しか見えない。


綺麗な脚──。


私は押し入れのふすまを閉めた。謎は逆に深まるばかりだ。


「あぁん…」


その時、女の喘ぎ声が聞こえた。かなり衝撃的だ。


人の部屋につかつか入りこんで自慰行為に励むなんて衝撃の他ない。


もっとも、つかつか入りこむのは私もなんだけど。


一層、女が誰なのか、もしくはどんな女性なのか気になるばかりだ。






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