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砂糖と雑巾  作者: お空
12/24

安心は母の甘い味

母さんがスーツ姿で私を不思議そうに見つめる。


「母さん…」

「ちょっと、コンビニ行こうと思って行ったら昔の友達と再会しちゃって。友達の家で飲んでそのまま寝ちゃってたわ」

「え…」

「心配しなくていいの。泣かないで」

「うん…」

流れでうなずいた。


「さあ、部屋に入りましょう。何か作るわ」


母さんは何事もなく鍵を開けた。優しいこの背中をもう二度と見れないと思っていた。

力が抜けた。色んな意味で。

ソファに倒れ込んだ。

朝にいた時と感覚が違うのは私の心を表しているようだった。

ボーっとしていたと思う。あれこれ考える余裕がないだけだったかもしれない。

考えるほど、物分かりは悪くない。


「ほら、出来たわよ」

気付いたら母さんが皿に乗せて何か持ってきた。

何だろう、と皿を覗いた。

ホットケーキとかいうやつだった。

「おいしいから」

母さんがニコッと笑う。

無論、苦手な分野に入る食べ物だ。

「うん」

折角、作ってくれたからうなずいた。この感じは久しぶりである。

恐る恐るフォークで切り、口に運んだ。

「どう?」

母さんは私の感想を待つ。

どうもこうも、甘くて不味い食べ物に決まってるじゃない──。

「あっ」

思わず声が出た。

「ふふ」

次は母さんがニッと笑う。

「そのホットケーキはシロップをかけてないの。バターだけを塗ったホットケーキ」

「母さん…」

「カンちゃんは、私に似て甘いものが嫌いだからね」

覚えていてくれたんだ…と心が温かくなる。母さんはそのことを正直、もう忘れたと思っていた。

「ありがとう」

ふいにつぶやいた。

「いいのよ」

母さんは、ニコニコ笑っている。何故、こんなに優しいんだろう。何故、こんなに笑顔でいれるんだろう。不思議だった。


母さんが作ってくれたホットケーキの生地は、ほんのり甘かった。





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