自問自答は究極の選択
これからどうしよう──。
母さんが心配なのも事実だ。
やはり隼人に相談しようか?
そのことが頭をよぎったけど、もし母さんが出掛けているだけなら余計な心配を隼人にさせるだけだ。
「隼人いまどこ?」
メールを送信した。
~♪
返信が早かった。
「図書館だよ」
とのことだった。
図書館…何でかなと疑問を抱いたけど、疑問はすぐに消えた。
行っていい?と送った。しかし、満席だから、と断られてしまった。珍しかった。隼人なら、良いよって言ってくれてデートしてくれるのに。
本当に仕方ないので、私は近所をうろついていた。
何か良い方法ないかな、と考えてみるけど考えれば考えるほど不安が渦巻いていく。
守の彼女の家は言うまでもなく知らない。守に帰ってきてもらおうと思った。家に入りたかった。
電話をかけてみる。
どうやら守は電源を切っているようだ。
あいつは馬鹿か。
今頃、彼女とベッドの上だろう。昼間から。
そう思うと腹が立ってくる。こちとやら彼氏にデート断られたんだよ、とモヤモヤした。
隼人の家に行こう、と思った。
腹いせに驚かしてやろう。母さんのことよりも自分の愛の方が大切だ、と私は考えた。
図書館が満席だからって来ちゃダメってヒドいじゃないか──。
何か理由があるのかも知れない。直感だった。
*
隼人の家はボロい…いや、古い二階建てのアパートだ。
隼人は二階の一番奥の部屋だ。
私は二階に上がった。今にも折れそうなサビで覆われている階段に足をかける。体重をかける度に、階段がギシギシ、と叫ぶ。
足は一番奥の部屋に向かう。
203──、隼人の部屋だ。
そっと、ドアに耳を傾ける。
心臓が何かに刺されたような思いだった。
──留守じゃない…。
隼人は図書館にいる筈だ。実に15前のやりとりである。そして15分で図書館から帰るのは不可能なねだ。
体をドアに密着させる。木製でできているドアとくっついてしまいそうだった。
話し声が聞こえてくる。
一体、誰なの──。
「隼人…」
「何だよ」
「ねぇ…」
会話が断片的に聞こえた。
私はもっとドアに耳をくっつけた。体の右半身は、隼人の家のドアに押し付けていた。とくに、右耳。
隼人と女の声だ。何がなんなのか理解できず、頭がこんがらがる。色んな暗い色の毛糸が絡まってぐちゃぐちゃになるような感じだ。
「ああん…」
「ほら」
その声がドア越しに私の耳に入った。AV見てるんだよね?そうだよね?他の女の子じゃないよね──。
丸いドアノブを開けようとする衝動に駆けられる。
もし隼人が鍵を閉めていればガチャ、という音が部屋に響くだろう。
私は思い切って、ドアノブに手をかけた。数センチ開けよう。そう、3センチだ。出来るだけ音を出さないように、奥の方を握る。
ゆっくり、左に回す。
鍵は、開いていた。