4: 撫でさせてやるのである
我輩は、まだ人間が今のような豊かな暮らしをする以前から、生き続けている。
今、この世にて我輩ほどの長寿を誇る生物はいない。
人間然り、同族然り。
故に、我輩は種として最も優れた存在であると言える。
よって、我輩はどんな生物からも敬われなくてはいけない。
現代の世を席巻している人間と言えど、それは同じ事である。
つまり、何が言いたいのかと言うと…………。
我輩を撫でるが良いぞ、主人。
これは特別である。
我が主人として、立ててやっているのである。
なので、我輩の頭を撫でる事を許してやろうと言うのだ。
まあ頭の他は、顎の下でも良い。耳の内側でも許してやろう。更に言えば、尾の付け根辺りを撫でさせてやっても良い。
ただし、腹は許さぬ。
自分を無防備にするなど、野性味溢れる我輩からするとあり得ない行為なのである。
我輩をそこんじょそこらの同族と、同じに思ってもらっては困る。
この世で最も威厳のある、偉大な種なのだから!!
ともかく、我輩を一刻も早く気持ち良くするのだ。
これは今だけである。
今を逃せば、もう二度とこんな機会は与えてやらぬのだ。
だから早く撫でるが良い。
だが待て、撫で過ぎはイカン。
何事も、ほどほどと言うのが重要だ。
我輩が温情にて撫でさせてやっていると言う事を、忘れてはイカンのである。
まあ、主人であれば態々言わずとも分かっているだろう。
なればこそ、主人と呼んでやっているのだ――――が!?
――――何をしている。主人。
何故今、撫でるのを止めようとしたっ――!?
もう十分撫でたとでも思っているのかっ!?
誰が止めて良いと言った!!
もっと撫でなくては許さぬ!!
主人!? 主人!! 何処へ行こうと言うのだ!?
待て! 許さぬ。認めぬぞ!?
し、仕方ない。ほらっ、腹を撫でさせてやろう。
だから早く我輩を、わしゃわしゃするのだ!!