表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/42

39: 懐かしき場所なのである



 ……ここだ。




 我輩はようやく故郷の地に辿り着いた。

 どれほどの年月を要したのか、もう我輩にも分からない。

 何故故郷を目指していたのかという理由すら思い出せない。


 ただ強烈な義務感に似た感情に後押しされて、我輩はここまで歩いてきた。

 身体はいう事を効かず、奔ることはおろか、歩く事すらままならない。

 一度立ち止まってしまえば、もう二度と動けないだろう。



 だが、それでも良い。


 何故なら我輩は今故郷に居るのだ。

 ここ以外、他にどこに行く必要があろうか。

 

 この地こそが、我輩の始まりにして終焉の土地なのだ。

 もう十分生きた。

 何も後悔することはない。

 何も思い残す事はない。


 ただ…………静かに眠りたい。

 










 ――――そんな夢を見た。







 ……どうやら、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

 我輩としたことが情けない。

 自分で思っていた以上に、心身は疲れていたようだ。


 分かっている。

 ここが故郷の地などではないということは。


 我輩の記憶にある故郷の土地とは、似ても似つかない。

 全く違う場所である。


 

 だが、正直。

 我輩は故郷を目指して旅をしてきたつもりであるが――――


 仮に故郷に辿り着いたとしても、我輩は気付くことが出来るであろうか。

 どこもかしこも、我輩が居た頃とは景観がまるっきり変わっている。

 人間の手によって。

 

 もしかしたら、我輩は気付かないのではなかろうか?

 或いは、実は既に故郷の地を通り過ぎてしまっているということは?

 もはや、我輩には分からない。 




 ……いかん。


 どうやら疲労により、本格的に心身が疲労しているようである。

 腹はいっこうに減らぬが、ともかくどこかで休まなくては。




 ……む。 


 …………あれは。




 前方に、どこか懐かしい雰囲気のする岩場がある。

 丁度よくひび割れており、我輩が身を休めるにピッタリであろう。

 


 丁度良い。

 暫くここで休んでいこう。


 岩場の隙間など、本当に久しぶりである。

 このような場所を住処としていたのは、あれはどれ程昔のことであったか……。

 恐らく、ここであれば我輩の心身も癒されるに違いない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ