3: 狭い所が好きなのである ※
※イラストありきで作られています。
我輩は狭い所を好む。
ただこれは、我輩が、と言うよりも、我が種族の本能とも言えるのかもしれない。
狭い場所があれば、とりあえず入らずにはいられないのだ。
まだ昔、我輩が若かった頃は、獲物を狩る為に岩場の隙間によく潜り込んだものである。
懐かしい。
……しかし、今それを思っても詮無き事。
今は今で楽しむしかないのである。
我輩は前向きなのである。
ただ、岩場も良かったが、今はそれに匹敵する場所がある事を認めねばならない。
人間とは愚かな種であるが、その場所を生み出した事だけは褒めてやっても良い。
無論、付け上がってもらっては困るが……。
まあ良い。
その場所であるが、それは人間が自分の鼻を拭くのに良く使う四角い箱の中なのである。
中には拭き物が大量に入っているらしく、その拭き物が少なくなるまでは入れないのが玉に瑕だ。
だが、初めてその中に収まった時。
我輩は不覚にも言いようのない安堵感に包まれてしまった。
以来、我輩のお気に入りの場所なのである。
ただし、これには注意しておかねばならない人間がいる。
それは主人の母親だ。
かの人間は事もあろうに、そのような我輩のお気に入りの居場所を、押し潰して直ぐに使えぬようにしてしまうのである。
まっこと腹が立…………むむ!?
今、その箱の中の吹き物が丁度無くなったのを、我が双眸が捉えた。
?!
イカン!
母親が箱を潰そうと見つめている……!!
そうはさせるかっ!
まっこと…………落ち着くのである。