2: 安物は認めぬのである ※
食事についてである。
我輩は基本的に肉を好む。
何しろまだ同族が野にて狩りをしていた頃から、我輩は生き続けているのである。
すっかり牙を抜かれてしまった嘆かわしい同族とは異なり、我輩はまだ野生を忘れた訳ではない。
狩りとて、やろうと思えばいつでも可能なのである。
とはいえ今のご時世。
例えば鳥などを狩ったりすると、あまり人間には喜ばれないのは我輩も知っている。
我輩はものしりなのである。
人間にどう思われようと我輩の知った事ではないのだが、主人に迷惑がかかるのはなるべく避けたい。
よって、今では精々、時折街の隅で見かける鼠をこっそり狩る位である。
昔は鼠を狩れば、人間などは逆に喜んでいた位だったが、今はそれすらもあまり良い顔はされない。
全く人間とは勝手な存在である。
まあ、しかし。
人間が我輩に食事を差し出すのを、悪し様に拒否するのも大人気ない。
仕方なく我輩は、我慢して食べてやっているのだ。
特に"きゃっとふーど"なるものなどは、仕方無しに食してやっている。
だが、そんな我輩の温情を人間は理解していない。
我輩が分かっていないとでも思ったか!
"きゃっとふーど"に優劣があることなどは、調べがついているのである!
我輩に安物を押し付けようとは……全くもって腹立たしい。
昨日もそうだった。
まっこと許せぬのである。
…………うむ。我輩は決めた。
もう安物を我輩に出してきても、我輩は絶対に食さないのである。
我輩に食事をして貰いたくば、最高級のものを用意するが良い!
…………ふむ。憤ったら腹が空いた。
そろそろ食事の用意をさせるか。
我輩の食事は、この青い容器の中に入れられるのである。
最初はどうかと思ったが中々に食べやすく、人間が我に差し出した物の中で、我輩が気に入っている物の一つだ。
コンコン。
コンコン。
この容器を前足で、こう……コンコン、と叩けば、人間は食事を用意するのである。
我輩がそう躾けてやった。
――どうやら母親が我輩の催促に気づいたようだ。
食事を準備しようとしている。
うむ。感心なことである。
…………ぬ?
貴様! それは安物ではないか!
分からないとでも思ったか!
我輩は高級品を所望するのである!
これだから人間は……全く油断も隙もあったものではない。
……む!? 何処へ行く。
高級品を用意していかぬか!!
戻って来い!
…………くっ、行ってしまいおった……。
ふんっ!
かのような食事。高貴なる我輩には相応しくない。誰が食してやるものか。
…………。
……………………食さぬぞ。
………………………………。
…………………………………………。
……………………………………………………くんくん。
…………ふ、ふんっ。
し、仕方ない。
我輩は寛容である。
今日の所はこれで勘弁してやるのである。