26: 人の成長は早いのである
人間の成長は早い。
赤子はいつの間にか二足で歩き出したかと思うと、みるみる内に大きくなった。
いつの間にか主人よりも大きくなっていた。
かと思うと、いつの間にか居なくなった。
別のねぐらに移り住んだに違いない。
さもありなん。
成長すれば親元を離れるというのは、どの種でも通過すべき体験であろう。
いつまでも親が毛づくろいをしてやるわけにもいかぬのだ。
自分で毛づくろいを覚えて、自分で伴侶となるものを見つけるのである。
自然の摂理である。
とはいえ、残された親としては少々物寂しいものでもあろう。
主人もどことなく悄然としているように見える。
むぅ……。
昔と比べると、ずいぶん主人の匂いも変わってしまった。
春草のようなどこか甘い匂いではなく、夏草のような清々しさを感じさせる匂いでもない。
とはいえ、嫌いな匂いではない。
どこか温かさを感じるような匂いなのである。
まあ、心地よい匂いではあるので不満はない。
満足しておいてやるのである。
……ふむ。
そんな事を考えていたら、急に身体を動かしたくなったわ。
どれ、久しぶりに球遊びなどはどうだ?
主人よ。