22: 子供の成長は早いのである
最近、赤子がやたらと活発に動き回るようになった。
日々どんどんデカクなっていく。
恐らく、直ぐに我輩よりも大きくなることであろう。
とはいえ、正直この頃が一番危険なのである。
我輩は知っている。
子猫と同じなのだ。
何が危険で、何が大丈夫なのか、まだ分かっていないのである。
仕方ない。
まっこと不本意ではあるが、我輩がじきじきに教育してやるとしよう。
なぁに、心配は要らぬ。
主人も我輩が育ててやったようなものなのである。
まあ、出会った時は赤子ではなかったが……同じことだ。
悠久の時を生きる我輩からすれば、赤子同然だったのである。
ともかく、主人はこんなにも大きくなれた。
それは我輩の力に寄る所が大なのである。
寧ろ、我輩の力のみと言っても良い。
ふふん。
しかし、そうだな。
先ずは我輩の方が偉いという事を、みっちり教え込まないといかぬであろう。
序列を認識させることは重要なのである。
この家の序列でいくと、我輩が最も高いのは言うまでもないが、それ以外。
主人、同居人、犬、そして、赤子という順番である。
なので赤子には、自分が一番下の存在であることを理解させることになろう。
ぬ?
噂をすれば何とやら。
赤子よ。早速我輩に教わりに来たか。
どんな種であれ、幼子とは無邪気で素直なものである。
しかし、我輩は多忙な身の上のため、本来であれば赤子の相手などしている暇はないのだが……。
仕方ない。
まっこと仕方ない。
ここは偉大なる我輩が、なけなしの時間を使って指導してやろ…………何をする。
ふむ……赤子よ。人の子よ。
教えてやろう。
今貴様が必死に掴もうとしているのは、我輩の尻尾である。
虫でも、鼠でもない。
貴様の玩具でも、もちろんない。
我輩の尻尾だ。
あまりに優雅な尻尾であるから、思わず興味を抱いてしまう気持ちも分からないではない。
そういった意味では我輩にも罪がある。
優雅すぎるという罪が。
それは素直に謝罪してやろう。すまぬ。
優雅すぎてすまない。
が、我輩にも罪があるとは言え、それは貴様が触れてよい理由にはならない。
赤子よ。そこは学ばねばならぬぞ?
我輩は偉大な存在である。
決して、その涎に塗れた手で触れてよい存在ではな……っつ!?
貴様!? 話を聞けっ!!
掴むなと言っておろうに!
ぬ!?
ぐ、ぐぬぬぬぅ。
ぐ、ぐ、グ、やめ…………。
ぐ、ぐにゃああああああああああああああ。
わ、わ、わ、我輩を、ふり、振り回すなあああああああああああ。