表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/42

1: オスは許せぬのである ※

 

 人間にしてはマシな方だと多少は認めてやっている、我輩と住処を共にする連中だが、当然不満が無い訳ではない。

 まあ、主人は及第点をやっても良い。

 流石、我輩に"主人"と呼ばせる存在である。

 問題は他の二匹なのだ。


 先ず主人の母親の方。

 このメスの煩い事煩い事。

 四角い箱を前にして、日がな一日がはは、と笑っている。

 その騒音だけで我輩の眠りを妨げる要因となるのに十分であるが、それ以上にイカン事がある。


 "そうじき"なるもの。

 これを操る時は、この上なくイカン。

 騒音はもとより、あの何者をも吸い込もうとする力。

 昔、一度うっかり吸い込まれそうになった事があるが、あの時は生きた心地がしなかったものだ。

 そして、これを操る時。このメスは分不相応にも我輩を邪魔者扱いするのである。

 まっこと腹立たしい。

 そんな凶悪な得物をちらつかせて、我輩を脅すとは……。


 まっこと許せぬが、こやつは我輩に食事を提供する殊勝さも持っている。

 それがあるからこそ、勘弁してやっているのだ。

 己の命が、我が寛容さの賜物である事をしかと肝に銘じておくが良い。


 次に、主人の父親の方についてだが……。

 こいつはイカン。

 何がイカンかと言えば、その匂いである。


 そもそも、これは人間全体に言えることだが、オスはどうにも臭くて駄目なのだ。

 小便のような匂いがする。

 そして、人間のオスであるという種独特の臭さに加えて、このオスは更なる悪臭を発するのだ。


 短く細い棒のようなものを口に加えた時が、その合図である。

 そうすると、むわっと口から煙を吐くのだ。

 その煙の臭い事臭い事。

 我輩の端正な鼻が曲がろうか、と思うほどである。

 近所の同族の話を聞くと、中にはこの臭いが好きと言う者もいるが……。

 我輩には気が知れぬ。


 そして、そんな悪臭を発していながらこのオス。

 事もあろうに我輩をベタベタと触ろうとしてくるのである。

 近くで持ち上げられた時など、まるで拷問である。

 必死に抵抗するのだが、どうやらこのオス。我輩が喜んでいると勘違いしているようなのである。

 まっこと度し難いオスだ。

 早い所、狩るべきだろうか……。


 挿絵(By みてみん)

 

 ……む!

 嫌な気配がすると思ったら、オスが我輩に近づいてきている。


 何だ、その笑みは……?! 

 ……まさか、我輩を抱き上げようと言うのか!?


 や、止めろ! 近づくでない!

 来るなと言っている! 分からぬのか!!

 や、止めろ、我輩を、我輩を抱くな! 我輩にその臭い息を吹きかけるなあぁ……!!


 う、うにゃあああああああああああああ。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ