16: 探検なのである
以前も言ったが、新しい土地に来て最初にする事は決まっている。
散歩であり、探検なのである。
ついでに、同族の様子を見回ってやろう。
この前の住処の周囲は家ばかりで、我輩たちが寛げる場所はなかった。
人間許すまじ。
ただ、どうやら今回の土地には、中々良さそうな場所がある。
それは家々の間にぽつりと存在している。
空き地なのである。
周囲を柵で囲われており、人間には容易に入れぬであろう。
そこが良い。
このような柵など、我が同族たちには何の障害にもならぬのである。
なれば我が同族の憩いの場となろう。
ふむ。
やはりというか、この周辺の同族はここを溜まり場にしているようだ。
空き地の中に、同族数匹が何をする訳でもなく寝そべっている様子が見てとれる。
当然である。
どれ…………ふふん。
どうやら大した輩は居なさそうである。
歴戦の猛者たる我輩とは比べるべくもない。
嘆かわしい事ではあるが、まあ仕方なかろう。
我輩と比較されれば、どんな生物であろうと存在が霞んで見えるのだ。
まっこと面倒では有るが、ここは我輩がこの地の新たな主となり、同族達を導いてやるとしよう。
む?
空き地の同族達が我輩の存在に気付いたようだ。
こっちを見ている…………。
……
…………
………………
…………今日は下見である。
か、顔見せは今度にするとしよう。
首を毛づくろって待っているが良い。