13: 野暮なことは言わぬのである
確かに、それは大事である。
種の存続の為には重要な事である。
かく言う我輩も、若い時は浮名を流したものだ。
何匹ものメス達から言い寄られた経験など、五萬とある。
いや、嘘ではない。
これは至極当然の事である。
太古の時より生きる我輩には、他の生物よりも多くの生があり、しいては経験がある。
その中には、今思い出しても甘い出来事もあれば、ほろ苦い出来事もある。
そんな多くの経験が、我輩の糧となっているのである。
我輩はそんな深みを持ったオスなのだ。
渋いのである。
……話が脱線してしまった。
まあ、我輩の話は今はよい。
問題は主人のことなのである。
どうも最近。
我輩の家に、見知らぬ人間のオスが訪れる機会が増えたのである。
ああ。皆まで言うな。
我輩もウブな子猫ではない。分かっている。
オスとメス同士の問題だ。
それだけならば、我輩がとやかく言う筋の話ではないのだが……。
ただ一点。
許せぬ事がある。
それはこのオスが、我輩の嫌いなあの煙を吐くのである。
主人の父親と同じだ。
パフパフパフパフと。
全く腹立たしい。
主人も嫌がっているようなのにもかかわらず、このオスは全く止めようとしない。
まっこと度し難いオスである!
ふむ。
そうだな……決めた。
ここはやはり、我輩が制裁を下す事にしよう。
愛用の研ぎで磨いたこの爪で!
そして、仕留めた後はきっちり埋めてやろう。
にゃっふっふ。
人間のオスよ。貴様の寿命もあと僅かである。
覚悟せよ。