表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/42

10: 挨拶回りなのである

 

 我輩は礼儀にも精通している。

 そこいらの獣と一緒にして貰っては困るというもの。

 邪で矮小な人間と比較するなど、もっての他だ。


 まあ、つまりだ。

 我輩が何を言いたいのかというと。 


 主人の所為とはいえ、新しい土地で生活することになった我輩が。

 近所の同族に挨拶するのは至極当然の事なのである。

 礼儀正しい我輩は、そんな細かな気遣いを忘れないのだ。


 ふん。

 とは言え、悠久の時を生きる我輩からすれば、そこいらに居る同族など皆子猫のようなものだ。

 早々に序列というものを教え込んでやる必要があるだろう。


 そういう訳で、”挨拶回り”を始めると、早速同族を一体発見した。

 ふむ。幸先がいい。

 ……とも思ったが、そうでもないようだ。

 どうやら”我輩”の家の、隣に住む人間に飼い殺されている様子。

 だらしない面で家の中に寝そべっている。


 嘆かわしい。我らの誇りはどこへいった!?


 ――――そう問い詰めたいが、まあよい。

 我輩は寛容である。

 今日の所は当初の予定通り、挨拶だけに済ませてやろう。


 ナァ~~~~~~~


 …………


 ナァ~~~~ナァ~~~~~~~


 ………………


 ナァ~~~~ナァ~~~~~~~ナァ~~~~~~~~~~


 ……………………



 ~~~~何だ奴は!!


 無礼にも程があるっ!!

 我輩の凛々しい雄叫びにも応えず、ちらりとこちらを一瞥しただけで、そのまま寝続けるとはっ!

 何と失礼な奴だ。

 もういいっ! アイツは放っておこう。

 後悔せよ同胞! 

 貴様は偉大なる我輩と知遇を得る万が一の機会を、まんまと逃したのである! 

 



 近所を探索する。

 ふむ。

 前居た所より、人が多いようだ。

 まあ、我には関係ないことだが。


 それより、この付近の同胞は一体なんだ!?

 ちらほら家の中に居るのは見かけるが、どいつもこいつも部屋に閉じこもってばかりで、ちっとも我輩の呼び掛けに応えようとしない。

 嘆かわしい。野生は如何した?

 それとも我輩の偉大な気配を感じ取り怯えているのか?


 …………ふむ。

 有りうる。


 まあともあれ。

 同族の質の低下が、著しいのである。

 まっこと嘆かわしい。

 どこかに我輩の心躍らせるような猛者はおらぬだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ