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竜として。  作者: おしり炒飯


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9/9

最終話 竜として。

終幕。

竜の王から、衝撃を伴った咆哮が放たれる。


 勇者は横にとびずさり、神速の早さで聖剣を振り、斬撃を飛ばす。

 地面を削りながら迫り来る斬撃を、竜の王は尾の一振りで消し飛ばした。


 飛び上がった勇者が指を指すと、竜の王に向かって氷の槍が突き刺さる。

 これを翼で防いだ瞬間、竜の王は生まれて初めて、痛みを感じた。


 翼の一部が、聖なる剣に切り裂かれていた。

 思わず、舌なめずりをする。


 戦いは、まだ始まったばかりだ。




 両翼の間から、蒼い炎弾が飛び出してくる。


 すかさず勇者は盾で受けるが、圧倒的な熱量と衝撃で吹き飛ばされる。

 盾の魔法障壁は、意味をなさなくなっていた。


 開いた距離を詰めるように、勇者が人外の速度で疾駆する。

 右手の聖剣が閃くと、飛ぶ斬撃が二つ、放たれた。

 竜の王は空中に飛び上がった。しかし、飛び上がった先にはすでに勇者がいた。


 光り輝く切っ先が、竜の腕を切り落とした。


 大声を上げてのけぞる竜の王。

 その隙を突くように、勇者が追撃に迫る。上段に構えた剣が、竜の王を両断すると思われたそのとき、聖なる剣がガキンと、音を立てて防がれた。


 一瞬、花びらが舞ったような幻覚を見た勇者は、自分が誘い込まれたのだと気づく。

 見えない魔法障壁が、竜の王を守ったのだ。


 痛みで叫び声を上げたのではない、魔法障壁をはるために、大声をあげたのだ。

 竜の王がにぃ~っと笑う。


 空中は竜の領分。その場で一回転した竜の王は、その強靱な尾を勇者へ叩きつけるのだった。




 砂埃が晴れると、勇者が膝をついていた。

 口元からは血が流れ、盾は完全にひしゃげている。


 一方の竜の王も、切断された腕からはドクドクと血が流れ、翼はボロボロになっていた。竜の王の渾身の一撃の際、勇者はその身を暴力的なまでの聖なる魔力で覆い、防御と同時に攻撃と成したのだ。


 したたり落ちる竜の青い血は、地面に落ちるとじゅうじゅうと煙を上げた。

 勇者がおもむろに、ひしゃげた盾を投げ捨て、聖剣を両手で握った。


 全身から黄金の魔力がほとばしり、雲も無いのに稲妻の音が聞こえてくる。


 おそらく、これが最後の一撃になる。


 竜の王の口から、蒼炎がジリジリと顔をのぞかせる。


 竜の王が大きく息を吸い込んだ瞬間。


 勇者が裂孔の気合いと共に、その光り輝く聖剣を振り下ろした。

 すさまじい衝撃と地鳴りと共に、黄金の斬撃が、竜の王に迫り来る。


 迎え撃つ。

 迎え撃って見せるッ!



 竜の王より、あの日この街を壊滅せしめた、不可避の蒼い閃光が解き放たれた。







 妙に、すがすがしい気分だった。


 腕は切りおとされ、かつて大空を駆けた大きな翼は、ぼろきれ同然の有様だった。


 どうだ、勇者よ。

 私の最後の一撃は、すさまじかっただろう?お前も、私と同じくらい、ボロボロではないか。

 いや…。私の方が、ひどい有様か…。


 竜の王の体は、もうくずれかけていた。勇者の斬撃は見事、竜の王の最期の輝きに打ち勝ったのだ。


 今思えば、私の人生、いや、竜生は、100点満点だったのではないだろうか。

 人として生きていた頃では、とうてい考えられないような、素晴らしい一生を送ることができた。


 竜として、自由を謳歌することができた。

 ああ、あの病室の少年よ。竜としての一生は、素晴らしいものだったぞ。



 ――勇者が、聖剣を振りかざす。



 ああ、勇者よ。

 最期に私と戦ってくれて、ありがとう。


 おかげで、私は最期に、素晴らしい幕引きができる。

 だから、お主に、勇気ある者のこれからに、幸あらんことを…。



 ――勇者の手は、剣は、震えていた。



 おや…?

 なんだ。どうしたんだい。

 そんなに悲しそうな顔をして。


 良いんだ。良いんだよ。これで良いんだ。


 君は、勇者として正しいことをしたんだ。

 だから、私なんかのために、涙を流さないでおくれ。


 君はこんなにも、優しい子だったんだね。ありがとう。






 ああ、今日の空は、どこまでも、青くて、高くて、きれいだなぁ。






fin


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


現在カクヨム様で新作長編を連載中です。

読んでいただけると嬉しいです。


ユニークスキルは【チクビーム】

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614


↓作者X(Twitter)新作報告や最新話情報はこちら

@oidochahan

https://x.com/oidochahan

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