第8話 竜の王と勇者
瓦礫と財宝の山の上。
孤独な玉座の上で竜は思考する。
周囲には若き竜たちが控えている。
私は、滅ぼした都市一帯の王となった。
気づけば私の周りには、多くの若い竜たちが集まり、どこからか持ってきた金銀財宝を献上するようになった。
遠い記憶、かつて矮小な人であった頃に読んだ書物に出てくるような、竜の王になっていた。
あの日、目の前で妹を失った日、私はこの身を焼き尽くすほどの怒りに身を任せ、この都市を滅ぼした。
後悔はない。竜として、すべきことをしたと思っている。
しかし、あの村に戻ろうとは思わなかった。思えなかった。
彼女との思い出に、泥を塗ってしまったような気がして。
それ以来、どれほどの月日が流れたか分からないが、私はこうして、この、滅ぼした都市の跡地で静かに暮らしている。
遠くで、何か音が聞こえる。
騒がしいな。何者だ、私の眠りを妨げるのは。
ゆっくりと目を開けると、驚くべき光景が目に飛び込んできた。
人族だ。
人族が、たった一人で私の配下たちと戦っている!
我が目を疑った。
その人族は、竜を相手に互角の、いや互角以上の戦いを繰り広げていた。
ありえない。
だが、そう思う以上に、忘れかけていた何かを、今、思い出せそうだ。
人族は配下の竜を下し、まっすぐと私に向かって歩いてくる。
手に持つは光り輝く聖なる剣。
魔法がかけられた盾。
磨き抜かれ、光り輝く白き鎧。
風にひらめく深紅のマント。
そうだ。
そうだ!やはり、やはりいたのだ!
そして、私の前に現れたのだ。
この私を、竜の王を倒しに、やってきたのだ!
数々の物語、その中で燦然と輝く存在。
はるか昔の記憶がよみがえる。
勇者が、あらわれたのだ!
胸が高鳴る。
いつぶりだろうか、こんなにワクワクするのは。
初めてゴブリンを倒したとき、いや、それよりも昔。
クリーム色の病室で、画面越しに冒険を繰り広げていたとき、ファンタジー小説を、初めて読んだとき以来か。
ドクドクと心臓の音が聞こえる。手足、翼に力が漲る。
瓦礫と財宝の山の上、竜と勇者が対峙する。
ああ、そうだ。私は竜だ。
竜であるならば、勇者と戦う義務がある。
愚かな人の子よ。感謝するぞ。
老いていくだけのこの体に、再び喜びを思い出させてくれて。
口角がつり上がり、口元から蒼炎がチラつく。
さぁ、褒美をやろう。私が、この竜の王が、勇者のお相手を仕る。
竜の王が あらわれた
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