第4話 少女との出会い
あの日、俺が大空を初めて飛んだ日から、しばらくの月日が流れた。
あの後、俺と妹はしばらく一緒に飛んでいたが、海が一望できる緑豊かな南国の地で、妹とは別れた。
妹は最後に俺に向けて炎を吐くと、無邪気な顔をして飛び去り、ジャングルに一本そびえたつ、巨木へと降り立った。
俺はといえば、さらにその先の大陸にて、生まれ育った山と似た山を見つけ、そこに住んでいる。
昼は気ままに狩りをして肉を食らい、大空を駆け巡った。
そんな自由を謳歌しているとき、俺は初めて、この世界における人族と出会った。
森の中にある、ぽつんと開けた場所で、昼寝をしていたときのことだ。
ガサガサと音がしたので、目を開けてみた。
すると、小さな女の子がこちらをじっと見つめていたのだ。
その小さな女の子は、これでもかというくらいまじまじと俺のことを見つめていたかと思うと、ぽてぽてと近づいてきて、何事かを話し始めた。
あいにく、この世界の言葉がわからなかった俺は、ただじっと、その子の話を聞いていた。
それ以来、私が昼寝をしていると、時折その子が遊びに来るようになった。最初は若干煩わしく感じていたが、だんだんと居心地がよくなってきてしまった。
どうやらその女の子は魔法が使えるようで、小さな傷程度ならば治せてしまうようだった。そもそも、この世界って魔法あったのか…!といった感じなのだが。
元ファンタジー大好き人間だった私である。
我流で魔法の練習をしてみたところ、簡単なものであれば、感覚で使えることが分かった。
まぁ、才能もないみたいだし、力任せに殴りつけたりする方が強いので、使うことはほとんど無いと思うが…。
人の成長とは早いもので、ぽてぽてしていた女の子は、少女になっていた。
相変わらず何事かを一人で一生懸命しゃべっている。
ふと、いたずら心が湧いて、俺は覚えたての魔法を使ってみることにした。フッ、と息を吹く。すると、色とりどりの花が、わっと辺り一面に咲き乱れた。
人だった頃、病室で読んだ図鑑に載っていた花々を再現してみたのだ。
突然のことに驚いた少女だったが、次の瞬間、たいそう喜んで俺の顔に抱きついてきた。
その笑顔は、俺が知っているどんな花よりも可憐だった。
少女はやがて、女性と呼べるほどに成長した。
大人になっても相変わらず、俺のところによく顔を出した。
しかしある日を境に、少女はぱったりと来なくなってしまった。
何かあったのだろうか?心配になると同時に、俺はいつのまにか、あの少女にすっかりほだされてしまっていたことを自覚した。
竜ともあろうものが、一人の少女に心をかき乱されるとは…。思わず苦笑してしまうと共に、前世で遊んだゲームの、姫をさらったドラゴンの気持ちがわかったような気がした。
ある日、一人の女性が私の前に現れた。
それは、いつかのあの少女だった。彼女は腕に、一人の赤ん坊を抱えていた。
彼女にそっくりのその赤ん坊は、俺の方をじっとみつめて、可憐な花のように、うれしそうに笑った。
人の営みとは、かくも美しいものか。願わくば、この美しき営みがいつまでも続かんことを。
次回から物語は大きく動きます。
現在カクヨム様で新作長編を連載中です。
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