第3話 旅立ちと別れ
始めての狩り(?)からしばらく、僕と妹は成長した。
体は母さんの1/4ほどまで大きくなり、ブレスの威力は上がり、空を飛べるようになった。飛べると言っても、まだ巣の周辺をちょろちょろ飛べるだけなんだけどね。
最近では自分たちで簡単な狩りをしている。
この山には、角を持ったウサギが生息していて、僕と妹はそれをおやつ代わりに狩って、食べている。
妹はまだまだやんちゃで、時折僕に向かって軽い火の息を吹きかけてくる。硬いうろこがあるから、なんともないんだけど、びっくりするからやめてほしい。
さらにそれからしばらくして、僕と妹が母さんの半分くらいになったころ。
その日は突然やってきた。いつもの朝。空は青く高く、山々にはうっすらと雲がたなびいており、草花には朝露がきらめいている。
突然、母さんが翼を大きく羽ばたかせ、遠くの山々、果ては緑の海のその先まで響き渡るような大きな遠吠えをあげた。言葉がなくとも、僕は母さんがなんと言っているか分かった。
ついに今日、この巣を旅立って、この空へ飛び立つときが来たのだ。
僕の翼は大きく、そして力強く成長していた。
この翼ならば、どこまでも飛んでゆけるだろう。
準備運動をするかのように、僕は二度、三度と翼をはためかせた。妹もまた、準備万端とでも言うように、つばさをはためかせながら、キラキラとした目で僕と母さんを交互に見ている。
母さんの太く、強靱な脚が、ミシミシと音を立てて収縮する。僕も同じように、脚にグッと力を入れる。力んで、力んで、力んで…。
ぶわっと、風をまとうようにして母さんが飛び立った。
僕もそれに続くようにして、一気に飛び上がった!
次の瞬間、僕は、大空を飛んでいた。どこまでも続く緑の絨毯。遠くの山並みにはうっすらと白く雪が積もり、眼下には白い雲が流れていた。
今この瞬間、僕はついに、ついに、自由を手に入れたのだ。
何度か僕たちがいた山の上空を旋回した後、母さんは南に向けて飛び始めた。
僕たちも母さんに続いて、飛んでいく。緑の海を越え、山を越え、大きな運河を越えた。川の近くには、人の街と思われる物が見えた。
城壁に囲まれたオレンジ色の町並みは、この世界に生を受けて初めて見る、人の営みの形だった。
そこから数時間ほど飛んだ時。母さんがおもむろに高度を上げ始めた。
僕と妹もついていくが、どんどん息苦しくなってくる。それでも母さんは高度を上げ続ける。
ついに、妹が鳴き声を上げだした。
僕ももうついて行けそうにない。それでも母さんは、僕たちを置いて、遙か上空へと上っていく。
そうか、ここで、お別れなんだ。
僕たちはもう、一匹の竜として、自分で生きていかなくてはならないんだ。
ありがとう、母さん。僕たちを産んで、育ててくれて。
この世界に竜としての命を与えてくれて。僕は大きな鳴き声を上げた。
母さんはちらりと、僕と妹へ目を向けた。
その目は、僕が生まれた日と同じ、優しい目をしていた。
母さんもまた、大きな鳴き声を上げると、やがて、見えなくなった。
現在カクヨム様で新作長編を連載中です。
読んでいただけると嬉しいです。
ユニークスキルは【チクビーム】
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614
↓作者X(Twitter)新作報告や最新話情報はこちら
@oidochahan
https://x.com/oidochahan




