第2話 初めての狩り
僕が竜としてこの世界に生を受けて、すこしの時間が経った。
まだ飛ぶことも火を吐くこともできないけれど、巣の中を歩き回ったり、外の様子をうかがい見ることができるようになった。
僕の新しい「家」は、どうやら高い山の頂上付近にあるようだ。
断崖絶壁に飛び出した岩棚に、木や、よくわからない羽毛、体毛のようなもので作られた、巨大な鳥の巣のような形状の家だ。
恐る恐る下をのぞき込んでみると、遙か下方に木々が生い茂っており、遠くには草原地帯と思われる場所が広がっていた。草原地帯は風にそよがれて波打つ、緑色の海のようであった。
ところで、僕には妹がいる。
たぶん、妹だ。僕とほぼ同時に生まれた、もう一匹の子竜のことだ。
僕には前世の記憶があるので、命に関わるような危険なことをしないが、妹はちがう。しょっちゅう巣から飛び降りようとするし、母竜の体によじ登ろうとするし、母から与えられた肉をそのまま丸呑みにしようとして、喉に詰まらせている。
危なっかしくて見ていられないので、毎度僕が助けているのだが、それが原因か、とてもなつかれてしまった。
前世では僕に兄妹はいなかったので、うれしいような、恥ずかしいような。
今世の家族について、父は一度も見ていない。基本的に、母がエサとなる肉を狩ってくるし、夜も母の大きな翼で包まれるように、守られるようにして眠っている。子育ては母竜だけでするという生態なのか、それとも、僕たちが生まれてくる前に、死んでしまったのだろうか。
こんな巨大な生き物を倒せる存在が、果たして本当にいるのだろうか…?この世界にも、「勇者」のような存在がいたりして。少しだけワクワクしながら、今日も眠りについた。
僕が少しだけ火を吐けるようになった頃、母は初めて獲物を丸々一匹持って帰ってきた。
その獲物の姿に、僕はとても驚いた。
緑色の肌に、人間のような手足。粗末な腰蓑を身につけ、顔はとても醜悪。
そう、おそらく前世で「ゴブリン」と呼称されていた存在だ。弱々しくもグギャグギャと何事かを喚いている。
今まではなんの肉かよくわからないまま、与えられるだけ食べてきたが、もしかしなくても、知らないうちにゴブリンの肉も食べていたのだろうか。
母は弱ったゴブリンを、鼻先で僕と妹の方に押しやってきた。もしかして、僕たちで仕留めて、食べろってこと…?
尻すごみしていると、真っ先に妹が飛び出して、ゴブリンの腕に噛みついた。
紫色の血を流しながら、ゴブリンは必死に逃げようとしている。
そのとき、ゴブリンが腰蓑の中から、尖った石のような物を取り出し、妹めがけて振り下ろした。
妹は突然のことに驚き、噛みつくのを辞めて、ゴロゴロと転がってしまった。
その光景を見たとき、確かに僕の中に闘志が沸いた。僕の妹に手を上げやがって…!
僕は大きく雄叫びを上げると、まっすぐゴブリンに頭突きをした。ゴブリンはそのまま押し倒され、僕の下で必死にもがいている。
僕はゴブリンの顔めがけて、覚えたばかりの火のブレスを浴びせかけた。子竜といえども、竜のブレスは威力があるようで、一瞬でゴブリンの顔は焼けただれ、醜悪だった顔はさらに目も当てられない状態になった。
瀕死になったゴブリンは、抵抗らしい抵抗もできなくなったようだ。
長く苦しめるのもかわいそうに思えて、僕はゴブリンの首元に噛みつき、その命を終わらせてやった。
現在カクヨム様で新作長編を連載中です。
読んでいただけると嬉しいです。
ユニークスキルは【チクビーム】
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614
↓作者X(Twitter)新作報告や最新話情報はこちら
@oidochahan
https://x.com/oidochahan




