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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第七章 魚

 僕(港)は眠い瞼をこすりながら学校への道を行く。僕は寝坊してしまっていた。「せっかく今日のテストのために三週間前から本気で勉強したっていうのに。」と悪態をつきながら学校の道を急ぐ。「まあまあ。港。あんたは普段から真面目なんだからテストだってなんだって何とでもなるわよ。」と僕の幼馴染、跡野預御(あとのよみ)は無責任に笑う。彼女の笑顔を見るといつも彼女から言いようのないパワーを頂いてしまっているような気がしてしまう。僕はいつもそれに対していたたまれない気持ちになっていた。「預御は今回のテストは自信があるのかい?」このいたたまれない気持ちを誤魔化したくて僕は彼女に尋ねた。彼女が寝坊するのは珍しかったからだ。「なんでそんなわかりきったことを訊くの?」彼女の成績は控えめに言っても悪かった。「いや、寝坊しているみたいだから。」「あなたも寝坊しているじゃない。」僕たちは黙って学校に急いだ。校門が閉まってしまうぎりぎりで僕たちは学校についた。彼女は校門を閉めようとしている先生に言い訳をしている。彼女はとても明るくて誰とでも円滑なコミュニケーションができた。僕が知っている限りは誰であったとしてもだ。その点、僕はあまりクラスの人と馴染めていなかった。常に明るい彼女にこびりつく汚れのような印象を周りからは待たれていたと思う。彼女と話していた先生はしょうがないなとでも言いたげな顔をして僕たちをぎりぎり遅刻扱いにはしないと約束してくれた。「どんな言い訳をしたの?」僕は彼女に尋ねたが、彼女は秘密と言うばかりだった。

 テストが始まった。僕は将来医者になるのが夢であった。このテストは学校の成績に大きくかかわるため夢のためにも計画だてて勉強に取り組んでいた。おかげで大体の問題はできたという手ごたえを感じていた。

 帰り道、僕は彼女といつも話しながら帰る。家の方向が一緒だったのも一つだが彼女の方から僕に積極的に話しかけきてそれが続いたものだから僕たちの中でそれが当たり前のようになっていた。「テストどう?」「まあまあかな。」「港のまあまあって当てにならないから嫌い。」彼女は不満そうな顔で僕を見る。彼女の瞳には光のない漆黒が広がっており、僕はその瞳に引き込まれる感覚に陥った。僕たちは他愛無い会話をしていつものように帰路に着いた。僕は家に帰っていつものように勉強をし本を読んで過ごしていた。外を見ると雪が降っていた。その雪はさらさらしていた。気づけばもう12月なのかと感じていた。

 ベットから起きると雪はいまだに降っていた。僕はいつものようにコーヒーを飲んで学校に向かう。登下校の途中にいつものように彼女がいた。彼女の首に巻いている白いマフラーはユリの花の刺繍ががあしらわれていた。とても似合っていると感じた。「雪は好き?」彼女は僕に尋ねてきた。「そうだな。いわれてみれば僕は雪が好きかもしれないな。」「どうして?」「雪を見た時に僕は言いようのない静けさを感じるんだ。それが僕に寄り添ってくれるんだ。」そう。あなたのように、という言葉が出そうになって飲み込んだ。変なことを言うと彼女にまたからかわれると思ったからだ。「私も好きだな、雪。他の季節でも降ってくれればいいのに。」彼女は無邪気に言って僕に笑いかけた。

 学校が終わって僕たちはいつもの帰り道を歩く。気温が一層冷え込んで雪の勢いが増した。僕たちは通学路途中の歩道橋の上から、下に広がる街並み、ヘッドライトをつけて走る車、街灯に照らされる雪を見ていた。彼女は僕に言った。「私ここから見える光景が好きなんだ。ここからなら私の探しているものが見つかる気がするの。」彼女の横顔が街灯に照らされた。それがとても儚げに僕の瞳には映った。僕は彼女を抱きしめた。しばらく僕たちは無言でこの光景を眺めていた。「私はあなたに抱きしめられるのを待っていたんだと思う。港。私が探していたのはあなただったのかもしれない。」彼女の瞳には涙が滲んでいるように見えた。僕は彼女とずっとこうしていたいと感じていた。

 次の日、僕がベットから起きると天井がおかしいことに気づく。未知なる天井。僕が見たことのない天井は気味の悪さを覚えるほどに白かった。僕は体を起こしてあたりを見渡す。目の前にもベットがあった。そのベットの横には点滴がやる気のないように横たわっていた。その点滴の通常体に入っているであろう部分には生々しい血が付着していた。ここは病院らしい。しかし人がいるような雰囲気がしない。僕はベットからおそるおそる出た。病室から出て廊下に出る。すると廊下の先から何か物音がした。何かを引きずる音がする。僕は病室に戻り、音のする方を覗いていた。それはゆっくりとやってきた。それは大きな魚であった。全長が僕の足くらいあるその魚はえらから二本の翼が生えておりその翼を足のようにして尾を引きずりながら廊下を徘徊している。僕は病室のベットに戻ろうとした。こんなのが現実であっていいはずがないと思ったからだ。しかし僕はベットに入ることができなかった。何かに躓いて僕は床に激突した。僕は足を見た。右足がくるぶしの上から切断されていた。魚が翼を広げて羽根を出しそれをまるで鋭利な刃物のように扱って僕の足を一瞬にして切断したのだ。僕は自分の血の気が引くような感じがしていた。あの魚から僕を殺したいという意思がひしひしと伝わってくる。僕は近くに何か落ちていないかあたりを見渡した。しかし何もなかった。次の瞬間、僕の左足も切断された。僕は何か持っていないか今一度確認した。携帯電話があった。しかし電話をかけようとした右手を意図もたやすく切断された。僕はもはやあきらめの中にいた。しかしそれとはまったく別でその魚への殺意が僕の中では渦巻いていった。魚が翼から大きい羽根を5本取り出す。この魚は余裕綽々とでも言いたげな顔だ。僕の中の殺意が増す。魚は僕に向けて5本の羽根を放った。僕は目をつぶった。頭に浮かぶのは昨日の彼女の横顔だった。僕は死を覚悟していた。しかし、目を開けると魚は自分の出した羽根で自身をめった刺しにしていた。僕の切断された足と手もなぜか治っていた。僕はその魚を右足で蹴り飛ばしこの病院から抜け出したのだった。

第七章 ~完~

読んでくださってありがとうございます。

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