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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第31章 夢の続き#3(夢の終焉)

この残骸を見た時、私の心に湧き上がってきたのは既視感だった。私はその既視感に戸惑う。その時、私のこの戸惑いを嘲笑うかのような笑い声が地響きのように私の心を震わせた。

私は強迫観念に突き動かされた。そんな私をその残骸の瞳が見ていた。その残骸の瞳は黒く透き通るようで、その瞳に私は引き込まれた。

気づくと私は真っ黒な水面に漂っていた。私はあたりを見渡すが、光がなく何も見えなかった。その感覚はまるで目を開けながら目を閉じているかのようだった。「どうして、私はここにいるのだろう。」ここじゃないどこかでそんな声が聞こえたような気がした。その声はまるでこの私に問いかけるかのようだった。(どうして、私はここにいるのだろう。どうしてこんな水のうねりに身をゆだね、揺蕩っているのだろう。)そんな自問自答には意味なんてなかった。ただ、その問いかけはこの私の周り、この水に漂う静寂を際立たせただけだった。私はその静寂を意識した瞬間にこの水面がとても狭苦しいもののように感じてしまった。その嫌な感覚が私の呼吸が荒くさせた。その呼吸が水面に当たって私の顔へ跳ね返った。その息の生暖かい気持ち悪さが私の首を掴み、この水面へと引きずり込んだ。

(どうして?)私の心に湧き上がったこの問いかけは毒だった。その問いかけは考えの放棄に他ならなかった。だけど、私はこの深い闇の中では、自分の存在を確かめることのできないこの闇の中では、この問いかけが私が私であるためのたった一つの救いのようだった。「それは救いじゃない。」(どうして、私はここにいるの?)「それは向かうべ理想だ。」(どうして、私はこんなにも閉塞感のような感覚を抱いているの?)「生きていれば、その問いかけに対する答えなんて存在しない。」(どうして、私の心はままならないでその凶器を振りかざすの?)「そんなことはわかりきっているだろうに。」(どうして、私は生きているの?)

~~~

その水の中で広がっていたのは虚無だった。そこには何もない。誰もいない。そんな世界が広がっていた。彼はその中で、その虚無で埋め尽くされたその中で彼は何かを見ていた。それはいい夢なんだろうか?彼は笑っていた。

~~~

私は目覚ましの音で起こされた。寝ぼけた瞼をこすりながら私は部屋のカーテンを開けた。カーテンを開けた瞬間、眩しい光が部屋を覆いつくした。私は眩しくて目を細めた。外はパラパラと雪が降っていた。道理で外が寒いわけだ。私は今日、休みだったからこの寒さにかこつけて煖房器具の電源をつけて布団に籠ってうだうだと過ごしていた。暖かな空気が私を覆っていく。その気持ちよさに私は眠りへと誘われた。次の瞬間、私は目覚ましの音で起こされた。

~~~

私の頭の中がうねる。繰り返される感情の発露。それは虚無に耐えきれない私が見せた過去の記憶の回生。(私がここにいることに意味なんてなかったんだ。)その繰り返される追憶は渦を成す。(私はこの監獄に自分から入ってしまったんだ。)その渦は感情を伴って私の心の形を私へと突き付けた。その醜悪な形をッ!(私の心は私が作り上げたものだった。そう、すべて自業自得だったんだ。ただ、それをずっと忘れていただけだったんだ。そして、そのことにずっと気づかないように息をしていただけだったんだ。)私の記憶がズタズタになっていく。そう、私の心が今までの記憶を否定して、拒絶して、貶めて、意味を、過去を、そして未来をもズタズタに引き裂いてしまう。その様を見て笑っていたのは私。その笑い声は断末魔のようにあたりを震わせていった。(私の生きていることに意味なんてなかった。意味があったとすればそれは私の今までの記憶が見せていた仮初の幸せだった。だけど、その見えてしまった幸せの形にはもう価値なんてないんだッ!そんな幸せの残骸を抱えて、無価値な意味を追い求めていたこの私はもう死人だったんだ。そうだ、私は死んでいたんだ。この残骸のために、生きることに意味なんてなかったんだッ!)

その時、私の何かが私を貫いた。それは包丁だった。それは私の胸に深々と突き刺さり、そして心臓を貫いた。その傷口から溢れ出るのはアカ黒い液体。その液体を見た瞬間、私はその液体が纏うおぞましさにどこか納得していた。そうか、これが正体だったんだ。これが私だったんだ。私に突き刺さったその包丁はそのアカ黒い液体を吸い込んでいった。そして、それは覚醒する。最も忌まわしく、最も穢れなき記憶を内包した神秘と畏怖の象徴、魂の形そのものに...

~~~

「フフフ。どうやらお前にとっての救いは巡り巡ってお前を見捨てたようだなッ!」彼は握りしめた。その漆黒のダガーナイフをッ!「お前は私の贄と成り果てて堕ちろ!」私は持っていた包丁で彼をぐちゃぐちゃになるようにめった刺しにした。戸惑いが確信に、既視感が真実に収束した。「これが運命、過去に縛られ続けていたしょうがないお前が追い求めていた真実だ。」彼はこの真実を前にして笑っていた。狂ったように。彼につけられた傷が増えれば増えるほどに、彼の笑いは大きくなっていった。

~~~~~

彼は目覚ましの音が鳴る前に起きた。彼は大きく伸びをしてカーテンを開けた。部屋を眩しい光が包み込んでいく。(いい目覚めだ。まるで長い長い夢から覚めたような心地の良い目覚めだ。)彼は部屋にあった鏡の前に立った。そして彼はこの顔をまじまじと眺めていた。その顔に微笑みを浮かべながら。彼は身支度を始めた。いつものように顔を洗い、いつものように頭を整え、いつものように刃を研いだ。そして、彼は窓を開けてベランダに出る。そして彼はそこから飛び降りた。

読んでくださってありがとうございます。

私は最近ラムネ菓子にハマってしまいました。

疲れた時に食べると、頭だけがすっきりとして

その感覚がどこか心地よくて。


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