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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第(10・2)章 黎明の刻~連続失踪・殺人事件~

僕は証拠を目の前にいる容疑者に突き出した。証拠:被害者の血痕が付いたナイフ、最後の目撃証言の後に被害者と会っていたことがわかる写真。「ここに写っているのは間違いなくあなたですね。赤坂さん」目の前の容疑者はその問いかけに無言を貫く。「情報提供がありまして。こちらは一週間前に撮られた写真でしてね。どうやらこの写真の中には港さんとあなたが写っているのですよ。」容疑者はその言葉を聞いてなお、目線を机に向けたまま黙り続けている。「我々はあなたをこの事件の重要参考人として家宅捜索させていただいておりました。その結果、あなたの部屋のクローゼットの奥でこのナイフが見つかったのです。」容疑者の身体が小刻みに震えたように見えた。「我々はこのナイフを調べたところ、被害者の血液情報と同一のものが検出されました。」容疑者は依然として黙り込んだままだ。「おい、なんとか言ったらどうなんだ!」僕が丁寧に取り調べを進める中で、我慢の限界に達した同僚(久留智海)が口をはさむ。俺は心の中でやれやれとため息が出そうになる。僕は慎重に取り調べをしようと言葉を選んで取り繕っていたのに。だけど、しょうがないとも感じてしまう。その容疑者の煮え切らない態度を見ていると怒りのようなやりきれなさみたいなものが僕の心に湧き上がったのも事実だったから。

~連続失踪殺人事件:概要~

この町、"参峰町"で相次いで行方不明者が続出した。被害者は様々だった。高校生、無職の男、30代後半の主婦、78歳のおばあちゃん、中学生。しかし、彼らには共通点があった。とても奇妙な共通点が。

~高校生~

「最近、変な夢見るんだよ。」「変な夢?」「そう、変な夢..」彼は私に話し出した。「その夢の中で僕は誰かと一緒にいた。そして何かを探そうとしていた。そして僕たちはついに探しているものを見つけたんだ。だけど...」

~~~~~~~~

「何をしているんだ。」その言葉の方を向いた。その視線の先に一人の男が立っていた。彼は右手にナイフを持ちこちらを笑いながら見ている。気づけば僕はさっきまでいたはずの日常の一幕のような空間ではなかった。夢の世界、それは僕の記憶をもとにしている世界。だから、僕は夢を見ているときに夢だと確信できる違和感を持つことができないと思う。確かに、夢の内容を後から考えてみるとおかしいと思うことはあるが、そのおかしさは夢だという事実で納得できるほどの小さいものだ。だけど、その場所は異質だった。さっきまで僕は誰かと現実の延長線上のどこか、町の中の何処かで何かを探していたはずだった。だけど、その空間は現実とあまりにも乖離していた。辺りには何もない、それは完全なる漆黒で埋め尽くされて、その漆黒の真下でその男は笑っていた。僕は戸惑う。彼が急に言葉を発した。「私は”土井”、お前はこのダガーナイフでもって殺す。」その言葉を合図に彼が影のようなねっとりとした状態へと変化して次の瞬間、僕の首筋に激痛が、衝撃を伴ってやってきた。その痛みは生々しかった。僕はこれは夢なんだと確信していたから、この現実と遜色ない痛みが身体全体に駆け巡ったとき、これは現実なんじゃないかと思ってしまった。僕は首筋をその痛みの源流を見る。そこには僕の首筋に刺さった鋭利な刃物があった。僕がそのナイフを見た瞬間、僕に出来た傷口から溢れんばかりの血が噴き出した。気持ち悪さが僕の心を絞めつける。僕が、僕だったものがあたりに散らばる感覚がした。僕の首筋に出来た傷はどんどん増えていく。何度も何度も執拗に、僕の首を抉るそのナイフ、なぜか途切れないこの意識、感じたことのないはずの痛み。僕は地面に倒れ伏す。血が床を染めていく様をその男は見下ろしていた。僕は最期に見たその顔が今でも脳裏に焼き付いて離れない。

僕が起きるとそこは僕の部屋だった。親が僕を心配そうに見ていた。僕の眼には涙が浮かんでいた。僕は寝ている間に叫んでしまっていたようだ。あの夢の中では叫ぶことすらできなかったのに。そして僕はいつものように顔を洗うために洗面所へ行き鏡を見る。すると、僕の首筋には寝る前にはなかったはずの変な痣みたいな跡があった。僕は言いようのない不安に包まれる。あれは本当に夢だったのだろうかという不安が...

~~~~~~~~

「それから、彼の様子は目に見えて変わっていきました。」そう話してくれたのは、彼の同級生”Aさん”、Aは港さんととても仲が良く、親友と呼べるほどの関係だったようだ。「彼はだんだんと口数が減っていきました。彼の表情には明らかに陰りがありました。私は彼を心配しましたが、彼が私に夢のことを話してから彼は私の心配を”大丈夫、ありがとう。”の一言で片づけるようになりました。」Aの声色は寂しげだった。

~~~~~~~~~

取り調べ室に彼の(久留智海)怒号が響く。「なあ、何とか言ったらどうですか?赤坂さんよ。このままだまり込んでいてもしょうがないですから。このナイフが見つかった以上あなたの疑いは晴れませんよ!」その言葉を合図にうつぶせのAが起き上がり、彼の顔を見る。そしてAは急に話し出した。「私がやりました。私が彼を殺しました。彼の首を何度も何度もそのナイフでめった刺しにしました。8回刺しました。彼の血があたりに散乱しました。」急な自白に僕、そして彼は戸惑った。「どうして、どうしてそんなことを...」智海が訊ねた。「彼の血はあたりを艶やかで忌むべき赤へと変えていきました。私は思いました。これで彼を救える、そう彼を開放できると。だけど、変わり果てた彼を見て、絶望の象徴へと変わり果てた彼を見て、私は大きな間違いをしていることに気づきました。開放、それは受動的な儀式、贄だったのは私。」「開放...?贄?」「私は卑怯者でした。そして、彼を開放することで私自身を開放しようとした愚か者でした。思えばどちらも咎人にすぎなかったのに。彼と私は同じだったのに。」「何を言っているんだ。」「私は無責任な、げんざいと向き合うことのできない死人でした。だから、私は彼の中にいる私をひどく恐れました。彼と過ごすうちに彼にとっての絶望は私の中で大きくなる希望そのものだと気づいてしまいました。そして彼は選択してしまいました。彼にとっての最期の希望を。それは私にとっての最初の希望(絶望)そのものでした。

*「やめて、死なないで!私はあなたにずっと救われていた。だから、あなたは私と違うの、違ってていいの!そんな選択しないで!どうか考え直して!」彼はそんな私を見てほほ笑む。「ごめん。」彼は持っていた包丁を自分の首筋に突き立てる。そこから噴き出した血が私の顔にかかる。私の心に湧き上がるのは彼との記憶。彼は本当の意味で裏切る。そんな彼を私は許せなかった。私はどんな形でもよかった。私は彼から包丁を奪い、そして彼の首を絞める。血が止まらないで流れ続ける。彼の顔は苦しそうだったがその顔には微笑みがあった。「ねえ、やめて‼救いでいることを止めないで!」彼の血は止まらない。私の手元には包丁が握られていた。「ごめん、ごめんなさい。」*」

その瞬間、取調室の中、Aが座っている椅子から崩れ落ちる。まるで何かに思いっきり右側から殴られたかのように。僕は何が起きたのかわからず茫然とその様をただ眺めていることしかできなかった。

読んでくださってありがとうございます。

私は今日、晩御飯に麻婆豆腐を食べました。

私は絹よりも木綿の方が好きです。

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