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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第(10・2)章 黎明の刻~純白~

僕は進路を真っすぐ(僕が目覚めた病室の方向じゃない方)を選択した。そして走り出す。後ろから響く轟音、それはこの建物全体を震わし僕の心を逸らせる。僕は必死に逃げる。息が荒くなり、苦しくなってくる。しかし、この廊下は想像以上に長く、何もなかった。僕は焦る。その焦りが僕の鼓動を速くする。冷汗が溢れ出して止まらない。背後で何かが爆ぜる音がした。しかし、僕にはもう背後を振り返る余裕なんてなかった。振り返らず走り続けて僕はようやく通路の先、曲がり角へと辿り着く。しかし、その先は袋小路だった。僕の心が絶望で染まる。その瞬間、地面が消失する。僕は下を見る。そこには黒い液体で覆われていた地面だったものがあった。

*「ねえ、どうしてあなたがそれを持っているの?」預御は彼に訊ねていた。彼の手には一冊の本が握られていた。それは”かつての手記”だった。彼はその問いを無視する。「それは、その手記は、だめだよ。どうしてここにあるの?この手記はあの時すべて失われたはずだったのに...」彼は何も言わないでその手記を彼女へと投げる。彼女は彼がその本を投げるなんて思わなかったために、意表を突かれた。彼女がその本を受け止めることはかなわずに、その本は地面に落ち、開かれた状態になる。彼女は思わず、目を背けた。しかし、彼女はすぐ気づいた。その手記はもうすでに抜け殻だったことに。その様を見て彼女は青ざめる。「まだ生きているの...メッセンジャーが!」

*世界の闇を前にした僕たち三人は迫りくる運命の鼓動を感じていた。「ねえ、作戦名何にする?」彼女はそう言って笑う。「そんなことどうでもいいだろ?」僕は彼女に笑いかける。こんな時でもいつもの様子を崩さない彼女の様子にどこか安心感を感じたから。そして僕たちはいつものように宇津野の方を見た。「俺から、名前の提案をさせてもらうよ。【ブラック・タイム】なんてどうだ?」僕たちはその問いかけに沈黙を返す。その名前の下で僕たちが目指す希望への道が”今”一つへと重なった、そんな予感がした。

*「もう僕はだめだ。僕は彼女を、僕にとっての希望を殺してまでこれからを生きていくなんて...ここにきてようやく僕のせいだって、今までのすべてが自業自得だってようやく気付くことができたのに...」彼女は目の前で絶望の象徴へと成り果てた。「ねえ、”希代”助けてよ。僕を助けて...この絶望から救ってよ!もう僕は君しかいないんだ、”希代”...君しかいないんだよ!」僕の手の中で彼女は笑っていた。彼女は僕のナイフを奪い自分に突き刺す。何度も、何度も。僕はその光景から目を逸らそうとした。だけど、どこを見ても彼女がいた。彼女の首がめった刺しになっていく。ぐちゃぐちゃに壊れていく。なのに彼女は微笑みをずっと浮かべていた。彼女の肌がだんだん白くなっていく。周囲が彼女の血で鮮やかでおぞましい血で染められていくにしたがって彼女の姿はどんどん白くなっていく。それからどれくらいたっただろうか、彼女は真っ白だった。彼女はいまだ首にナイフを突き立てているが、首からは血はもう流れていない。彼女は気持ち悪いほど白かった。まるで純白と形容できるほどに。僕は気づく。もう、彼女は僕にとっての希望でも、絶望ですらなかったということに。彼女は彼女だった、そんな当たり前のことに僕はようやく気付くことができた。その瞬間、彼女と過ごした今までが、記憶が僕の目の前を駆け抜けていく。そして、その記憶の海の中で僕は彼女を見つけた。そうか、”よみ”はまだ生きている、今、ここで!じゃあ、この目の前にいる彼女は偽物だぁ!僕は持っていたナイフでその偽物をめった刺しにした。

~~~~~~~

俺はようやく彼を追い詰めた。彼は包丁を力強く握っている。俺は彼の心が死んでいることに気づいていた。彼の瞳はくすんだ灰色へと成り果てていたから。俺は彼を見ている。彼の腕がゆっくりと動き出し、その凶器の先端が彼の首筋に刺さる。彼の呼吸が荒くなる。「助けて、助けてよ希代!」彼は、妙なことを口走る。希代?誰のことだろう。俺は希代なんて知らない。「僕をこの絶望から救ってよ!君が僕にとっての最後の希望なんだ!」その瞬間、彼はそこで横たわる彼女にいつの間にか持っていたナイフを突き立てる。「そうか、彼女は生きているんだぁ!アハッハハハハハ!」その言葉が彼を中心に空間を切り付けた。周囲が、執拗に切り付けられたところからどんどん白くなっていく。天井が、床が、壁が気持ち悪くなるほどに真っ白へと成り果てた。俺は彼の瞳を見る。そこには今まで見たこともないような深淵が広がっていた。

*僕の周囲を覆いつくす暗闇、そしてそこから現れる”線”。その線は空間を侵食しその影のような暗闇を増大させ、僕の逃げ場を消し去った。僕はその影の中央に立つ男を見る。彼は笑っていた。彼の瞳は真っ黒で底知れない。絶望の臭いがあたりに満ちる。その男が暗闇からその線のような何かを5本取り出し、僕へと放つ。その勢い圧倒され死を悟った僕は思わず目を閉じてしまった。脳裏に浮かぶのは、歩道橋の上で見た彼女の横顔。僕は死を覚悟した。その瞬間、大きな衝撃と何かがぶつかる音。僕の横顔を凄まじい風が吹きすさぶ。しかし、痛くない。攻撃が逸れた?僕は目を開ける。そこには一人の男が僕と僕を追い立てるその男との間に割り込みその影を右足で蹴り飛ばしていた。目の前に現れたその男は言う。「やあ。何とか間に合ったようだね。」その男は僕に砕けた笑みを浮かべ笑いかける。「俺は天肴翔(トビウオ)。君を助けに来たんだ!」

読んでくださってありがとうございます。

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