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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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番外編 

僕の首筋に突き刺さったナイフを見て彼は泣いていた。「どうやら僕はここまでみたいだな。」その言葉を聞いた彼は泣き崩れる。「ここでお終いなの?これが末路だっていうの?お前はなんのために生きてきたんだよ?」彼の声は今にも破裂してしまいそうになっていた。「そうだな。僕は確かに今まで生きてきた。だけど、今まで僕は生きているにはあまりにも受動的だったんだ。そう、降りかかる火の粉をその都度払うかの如く。だけどさすがの僕でもこの身体に突き刺さったナイフを振り払うことはできないみたいだ。残念だよ。」「そうやって諦めるの?今までの生を、今=現実で否定して!」「諦め?確かにそうかもしれない。だけど、僕は今まで生きてきたこの命を名残惜しいと思う気持ちは確かにあったんだ。この突き刺さるナイフを見るまでは…だけど僕がこれを見た時に湧いてきたものは安堵だったんだよ!!どうしてなんだろうな?僕は今まで生きてきたことに誇りを持っていたのに!生まれ変わることができたらまたこの人生を歩んでいきたいとさえ思っていたのに!」僕の言葉を聞いて彼は僕を見下す。「嘘つき!お前はただのうのうと生きていただけなんだろ!お前が抱いていたそんな感情は、そんな学のない無知なお前の今までの象徴なんだろ!」僕の首から血が流れていく。僕の意識をのせて。「そう、僕は無知だった。今になって痛感するよ。もっといろいろなことを経験すれば、苦手なことをしてみたり嫌いな人とあえて積極的に話してみたりすれば、よかったって。だけど、もう遅いんだ。このナイフをもう僕はどうすることもできないから。だけど不思議と怖くはない。もうこれで僕はお終いだから。そう考えると心地いい。今この瞬間だけはこの世界は僕だけのものの様で。この心地よさの前では苦しみもいわゆるアクセントにすぎないなんて思ってしまう。」その言葉を聞きながら彼は俺に突き刺さっているナイフを引き抜いた。そこから血が噴き出る。「ここにきて僕は一つの解を得たよ。死は今までからの開放にすぎないってことが。だから生は泣き声で始まるんだ。」僕は笑い出す。「アハッハハ!だからぁ、最期には笑うべきなんだよ。今までの僕にとっての絶望をあざ笑うように!」その言葉を聞いた彼は失意の眼差しで俺を見下す。「黙れ。この咎人が。お前は自分を諦めるだけに飽き足らず、この世界そのものを愚弄するつもりか?」彼は僕にナイフを突き刺した。「本来、その儀式はもっと神聖なものだった。原罪と贖罪、その脈々と受け継がれてきた螺旋を成り立たせるための。そして原初の契約を成り立たせるための。そう、お前たちは代理にすぎないんだ。もう、罪の源流は死んでしまったのだから。だけど、お前たちはその罪を忘れてしまった。その時点でもうすでに可笑しく捻じれてしまっていたんだ。そう、その捻じれがお前だ。」彼は僕にナイフを突き刺す。「お前はもう死んだつもりのようだ。だからそうやって無責任に自分をこの世界を客観視できるんだろうさ。だけどお前はここでまだその命をくすぶらせている。そう、お前はまだ生きている、死はこれからさ、お前はここにきてまだ現実と向き合うことができないんだ。そう、だから絶望もしない。」彼は僕にナイフを突き立てる。「絶望は希望の逆位相。希望は生、”はじまり”の象徴。絶望は死、終わりの象徴。その明滅がこの世界を成り立たせている。」彼は笑っていった。「確かにお前の言う解は一概に間違っているとは言えないな。そう、死は救い、存在そのものが普遍的に持つ原罪それらからの”開放”。」彼はそう言うと持っていたナイフを自らに突き刺した。その瞬間、僕の目の前に立っていた彼は僕だったと気づいてしまった。「どうして?どうして僕がいるんだ?そうか!これが死か!!」僕はいつの間にか持っていたナイフで身体をめった刺しにした。その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。

読んでくださってありがとうございます。

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