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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第十九章 好敵手ーN 第一話

タイムマシン、希望が生まれた瞬間と絶望の象徴。これは今までの夢そのものだったのに、それだけだったのに。「これを使え!」目の前で彼が倒れる。彼の身体は砂状になり消えていく。彼は俺にこの部品を手渡した。「時田?どうして、どうしてこんなことに…」「これは仕組まれていたんだ。タイムマシン、かつての手記、月で発見された石、それらが導きだした一つの解。それがこの末路だ。」彼は俺の手にその部品を握らせる。「これは今この世界で起きている一つの解を示し、その運命にあらがうために用意したものだ。これを使え!そして俺のようになるなぁ!」その言葉を最期にして彼は砂状になって消え去る。その砂は雪のような寂しさを纏っていた。

タイムマシン、俺と彼はこのタイムマシンに夢を見ていた。俺たちは話し合っていた。もし、タイムマシンがあれば、と。後悔もない、すべてにやり直しがきく世界。そんな理想郷に行ってみたいとかつての俺たちは思い描いていた。俺たちは会社を立ち上げた。"Yesterday company"通称、Y社。その会社で俺たちはタイムマシン開発を目標に日夜開発、実験を行っていた。タイムマシン開発は難航したが、とてもやりがいがあった。開発する中で出てきたタイムマシンデザイン案を自転車やスポーツウェアなんかに応用したのが何かの賞を取って一躍話題になることもあった。タイムマシン開発は全く進んでいなかったがこのまま彼と会社経営をこんな風に続けていけるのならそれでいいと俺は思い始めていた。

ある日、彼が何かの紙をもって俺の目の前に現れた。「おい、これを見ろよ。」そこにあったものは地図、そして何かの写真。そこには祭壇のようなものがあり、その中央で橙に燃えている石があった。「これって…」俺はこの祭壇に心あたりはなかったがその中央で橙色に燃えている石には見覚えがあった。「これは最近発見された遺跡内部で撮られた写真だ。どこで撮られたと思う?」俺は考える。しかし、心当たりがない。「この写真はマリアナ海溝水深八千メートルで撮られたものだ。」「えっ!」「俺も初めて聞いたときは耳を疑ったよ。マリアナ海溝に遺跡があることもそうだがその遺跡には炎がある。つまり、どういうわけかこの遺跡内は酸素があるようだ。そしてこの写真からこの遺跡は失われた伝承、そう原初の神にまつわる遺跡である可能性が高い!」

原初の神、かつてこの地球を創り出したとされる神々、彼らの伝承はもう途絶えてしまっている。俺たちが知っていた彼らのことは三つ、原初の神は無から有を創造したということ、時間や空間は思いのままだったということ、そして彼らは滅んだということ。俺たちはその噂まがいの薄い消えかかった伝承の一部、時間や空間は思いのままだったということ、にすがっていた。タイムマシンという夢物語を現実にするために。

彼はそう言い終わると持っていた地図を見せる。「遺跡の場所はもう割り出した。マリアナ海溝、北緯11度東経142度、深淵に最も近い場所。」彼は持っている地図でその場所を指さす。彼のそんな姿に呆気にとられていた自分がいた。「割り出したって…まさか!」「そうさ!俺はこの遺跡に行く。俺たちが開発した潜水艦”The submarine"を使って!」

The submarine、それは俺たちの会社が何かの賞をもらって一躍有名になったときにどこかの金持ちから注文が入った潜水艦だ。その金持ちは自身のアイデアを会社に持ち込んだ。そのアイデアは構造的な欠陥を孕んでいた。俺たちは何度もその金持ちと話し合い、何度もリテイクを重ねた。その結果、9隻の潜水艦の試作品が出来上がった。金持ちはこの9隻すべての代金を支払い、そしてその中で一番気にいった潜水艦、3番艦を持って行った。そして俺たちの工房には8隻の在庫が残された。俺たちはその在庫をどうしようか考えていた。潜水艦はどれもデザインが異なるだけで内部構造は変わらない。そしてどれもちゃんと潜水艦として使うことができる。

俺はわくわくしていた。俺たちの工房に死んだように横たわるこの潜水艦たちを横目に、高鳴る思いでいっぱいになっていた。この生まれた意味を持てなかった生ける屍がようやく意味を持つことができるのかという感慨深さが心に溢れ出したから。「どの潜水艦にする?」彼はもう決めていたようだ。「八番艦、”ハウへト”。この艦にするよ。」「まあ、そう言うと思ったよ。その艦はお前が一番時間をかけてデザインしていたもんな。そしたら、いつ出発する?」俺の言葉に彼は言った。「なるべくはやく行きたい。この潜水艦の調整が終わり次第出発するなんてのはどうだい?目標を明後日として。」その言葉を聞いた俺は笑みをこぼしてしまう。「久しぶりに忙しくなるな。ここんところ仕事の注文も落ち着いてしまって退屈だったんだ。」この大きな仕事を前にしたときの張りつめた空気に浸された心がひりつく、この感覚がたまらない。俺は張り切ってこの潜水艦の調整に入った。

続く

読んでくださってありがとうございます。

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