第十八章 任務#1 第二話
俺は車を駆り目の前の大型トラックを追う。そのトラックは異常なスピードでこの高速道路を疾走する。俺は自身のトランス能力「セクト」の権能をこの車全体に覆いつくした。そしてトラックに向けて車の影から召喚した力の線を飛ばす。初撃はクリーンヒット。トラックの荷台コンテナに直撃。そこに砂煙ができる。しかし、その砂煙が無くなると、そのトラックの攻撃が当たった荷台部分には傷一つなかった。そして、そこには、大型トラック荷台上部には誰かが…その人影は飛び上がる。そして俺の車のボンネットに着地する。大きな衝撃を伴って。俺は車から飛び降りた。俺が車から飛び降りたその刹那、車が粉々に崩壊する。俺は血の気が引くような思いがしていた。そうか、お前が「アバターA」。
~~~~~~~~~~
作戦会議だ。時田がいなくなった会議室で僕たちは時田がくれた情報をもとに作戦を立てた。宇津野と夜見がアバターAの注意をひきつける。その隙に遠く離れたところから僕が狙撃しこの大型トラックごとタイムマシンを葬り去る。「ねえ。作戦名何にする?」彼女はそう言って無邪気に笑う。「おい。そんなことどうでもいいだろ?」僕の言葉に彼女は首を振る。「えぇ~名前つけないの?希代?あなたにはこの作戦に愛着とかはないの?」彼女は信じられないと言いたげな目をしていた。「夜見。僕はあなたが名前を付けたい理由がわからないよ。」「だって、せっかく私たちが考えたんだよ。それに名前を付けることには大きな意義があって…」僕は彼女の言葉を遮る。「やれやれ。またお得意の占いか?勘弁してくれよ。今から僕たちは僕たちのために同胞を殺すのに…。僕たちがここにいる存在意義を思い出してくれ。夜見!」彼女の表情が曇る。「そうだろ。所詮、この作戦は僕たち生きるために必要な義務でしかないんだ。愛着?意義?そんなのになんの意味がある?そうだよ。意味なんてないんだ。僕たちがこの作戦に求めるのは結果だ。そうこの作戦自体はどうでもいいんだよ。」僕がそこまで言ったところで僕たちの様子を黙ってみていた彼が口を開き割って入る。「俺は夜見に賛成だ。いざというときに名前があると便利だろうしな。それに希代、お前の言い分もわかるが少し度が過ぎるんじゃないか?それにお前ただ名前を考えるのがめんどくさいだけだろ。」「ばれたか…。そうだよ。いちいち名前考えるのめんどいじゃん、夜見?だからさもう俺の言い分に諦めて折れてくれるかなぁって期待したんだよね。」そう言って笑って見せた僕を彼女が殴る。「畜生。今度の今度は許せねぇ。」「ヤバッ」僕は会議室の中で逃げ回る。しかし、夜見からは逃げることなんてできない。「ごめん、ごめん。許してくれ。」彼女に床に叩きつけられて服の襟を片手でつかまれていた。服がどんどん伸びていく。僕はその服の憂いを嘆きながら彼の言葉を聞いた。「俺から名前の提案させてもらうよ。【ハイウェイ・タイム】なんてどうだ?」僕たちはいろいろな名前の案を出し合った。一通り出尽くした後、最初に宇津野がいった提案「ハイウェイ・タイム」に落ち着いた。提案した宇津野よりも夜見の方がこの名前を気にいっていたように見えた。
~~~~~~~~~~
目の前にいるのは大男。彼は黒いローブを身に纏い俺の目の前に立ちふさがっている。「新手か。よくもまぁ懲りないことだ。」彼の体は二メートル以上の体躯で腕を組み、立っている俺を上から見下している。「これはこれは、盛大なお出迎えだな。アバターA。」「そうか、僕のことはもう知られているようだな。ただ、お前が出てくるとは思っていなかったよ。裏切者。」宇津野は久しぶりにその言葉を聞いた気がした。大型トラックはその大男を置き去りにして高速道路を駆けていく。「おい、お前の任務はあのトラックの護衛だろ。いいのか?」「ああ。そんな任務はどうでもいいんだ。もう今となっては。」彼はそう言うと右腕を前に出し掲げる。彼の瞳は赤褐色の瞳を持っていた。そして彼はおもむろに笑い出した。「僕はずっとこの時を待っていたんだ。そう、僕はずっとお前を殺すために今まで生きてきたのだからなぁ!!」彼の拳に言いようのない力の集合がまとわりついた。それを見た俺は自身のトランス能力「セクト」の権能を身体全体に覆いつくし戦闘形態をとる。
~~~~~~~~~~
宇津野のトランス能力「セクト」。これは切断力の応用。自身のトランス能力で全体を包み込んだ物の影から力の線を召喚する。力の線は影のように黒く、直径10㎝の円を底面にもつ円柱の形を成している。そしてその本数は影の大きさに比例する。宇津野の身体の影から出せる本数は3本が限界。宇津野がトラックに攻撃した時は車の影と、宇津野の影から合わせて8本展開した。その力の線に触れたものは切断される。そしてこの攻撃は触れた物の硬さを無視する。
~~~~~~~~~~
「おい!希代そっちに行ったぞ!」俺は希代に指示を飛ばす。「ハイハイ。了解。」彼の気の抜けた返事がアミュレットから響く。「夜見!俺はこいつの相手をする。トラックの誘導は任せた。」「おっけ~♪任された!」彼女の元気な声がアミュレットから響いた。俺は正面に向き合った。目の前の男は力を右腕に収束させる。彼の周囲に重圧がかかり、その重圧が空間を緊張で埋め尽くす。その緊張は俺の心を鷲掴みにするスリルそのものだった。俺はそのスリルに応えるように特殊盾「ディ・ホメル」を展開した。彼と俺との間に生まれたこのスリルにふさわしい決戦の舞台が今ここに姿を現す!
続く
読んでくださってありがとうございます。




