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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第十二章 強襲編 第五話

「か~け~も~ち~。この後はあのラーメン屋でご飯にしよ~ぜ?」「その呼び方やめろ。あとお前どうせ私に奢らせるつもりなんだろ?」「フッ。ばれてしまったようだな」俺たちは学校の帰り道を横並びで歩いていた。遠くに見える山々に夕日が沈みこみ俺たちの影が深まっていく。俺たちはいつものように他愛のない話で盛り上がり気づけばいつものようにラーメン屋の前まで来ていた。俺たちは意気揚々とその扉を開ける。「なにこれ…」

 この店の名は「聖杯」。おいしいが有名でないお店。俺たちは学校終わりにはよくこのお店のお世話になっていた。俺がこの店を知ったのはかつての友達”土井”がおいしいと絶賛していたのがきっかけだった。彼はいろいろな人にこのラーメン屋を勧めていた。「味噌ラーメン一杯。バター添えで」このラーメンはおいしかった。俺が今まで食べたどのラーメンよりもずっと!!「うまいやろ。」そう言った彼のどや顔が憎たらしかったのは今でも忘れることができない。

 俺の眼に飛び込んできたのは死屍累々。テーブル席で鋭利な刃物でぐちゃぐちゃにされた店主。カウンターには机に突っ伏して額から血を垂れ流す死体。俺たちはこの光景を少しの間茫然と見ていた。彼(懸餅蒼汰)はカウンターの死体に近づく。そしてその遺体に触れる。俺はその行動を止めることができなかった。この時の俺の体は金縛りにあったかのように動かすことができなかった。彼は突っ伏した遺体の顔を覗き込む。その顔を確認した瞬間、彼は大声で笑い出した。「アハハハハ‼」俺は彼のそんな様子を見て後ずさる。「そうか。作り話じゃなかったんだ。本当のことだったんだ!あれはぁ‼」彼は笑いながらカウンターに回り込みそこから何かを引き抜く。それは包丁だった。そして彼はその包丁でそのカウンターの死体を傷つける。執拗に追い立てるように。「おい!何をやっているんだ‼」俺は彼に問いかけた。しかし、彼は俺の言葉に訊く耳を持たない。俺は持ち前の体術で彼を押さえつけようと彼に向かう。しかし、俺の腕は彼に触れる瞬間に横に逸れてうまく取り押さえることができなかった。「どうやら私は思い出してしまったよ。彼が消えてしまったあの日、彼は本当のことを話してくれたんだ。だけど俺は彼の友達だったのに彼を信じることができなかった。荒唐無稽の作り話だって思ったんだ。」彼の瞳が黒に染まる。「だから私は彼を拒絶してその言葉から逃げてしまったんだ。そう、俺は彼を見殺しにしたんだ。」彼の瞳が漆黒に染まる。「私はいつも遅いんだ。いつも自分を信じていなかったから、信じることができなかったから。そう、そんな私が他人を心の底から信じることなんてできるわけがないんだ。」彼の瞳は深淵へと導かれる。「この末路は今までの報い。積もり積もった自業自得が望んだ末路。嘘つきの私にお似合いの絶望だ。たぶん私は生きているだけでしょうがなかったんだ。そんな私を彼は励ましてくれたっていうのに。やっぱりあの時諦めていればよかったんだ。」彼の瞳がぐちゃぐちゃになっていくように見える。まるで八つ裂きにされていくかのように。「私はぁもう諦めることにした。それが彼に対する贖罪になると信じることにしたんだ。それが今の私にとっての最後の希望。だからぁ邪魔をするな‼」彼の言葉は今にも破裂してしまいそうな苦しみを伴っていた。彼は俺を押しのけた。そしてその遺体にまた包丁を切り付け傷つけようとする。

 そんな彼を俺は思いっきりぶん殴った。彼はバランスを崩し床に倒れる。彼は驚いた様子でこちらを見た。「どうして邪魔をするの…!やっと私は開放されるのに‼」そう言った彼の顔をもう一度殴る。「ふざけんなよ!本当のこと?諦めた?五月蠅いんだよ!さっきからお前の言葉を聞いているとストレスがたまるんだよ。お前の過去への後悔が何だってんだよ。そんな過去を作り出してきたのは今のお前自身だろうがぁ!お前は過去の自分という名の虚構に責任を擦り付けているだけなんだ!」その言葉を聞いて彼は俺を睨む。「黙れぇ‼お前に俺の何がわかる!」「何もわからないさ。俺はお前じゃぁないからな。だが、お前は今も過去も変わっていないってことはわかるぜ。今だってそうやって逃げようとしているのだからな。」’その言葉が鋭利なナイフのように突き刺さる。そして私は彼を見て青ざめた。「どうして、なんでお前がここにいるの?」「やぁ。久しぶり?よかった。覚えててくれたんだね。」彼は私の前で笑って見せる。彼は私に近づいてくる。この空間を闇で浸しながら。俺は彼に包丁を突き立てる。しかし、彼は不明瞭な液体の様で刺さったはずの包丁がすり抜けた。私は彼から逃げるようにカウンターの中に入る。彼はゆっくりと近づいてくる。何かないか。何でもいい。何か!私はあたりを見渡す。棚にはビニール袋が一つ残されているだけだった。私はなぜかその袋にあるものが何なのか知っているそんな気がしていた。私はビニール袋から銃を取り出した。私は彼に向かって迷うことなく引き金を引く。しかしその銃弾は彼に当たらなかった。その刹那、私は胸に大きな衝撃を感じた。そう、私の胸に風穴ができていた。

~~~~~~~~~~~

「さよなら」彼女に銃を突きつけられて俺は死を覚悟する。どこかで銃声がする。その銃声が鳴りを潜めて俺は目を開けると目の前には”よみ”の死体があった。彼女の胸からは赤黒い液体が流れ続けている。俺はいつの間にか”よみ”が持っていたダガーナイフを握っていた。

 続く

読んでくださってありがとうございます。

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