第二章 消えた仲間
僕(今生希代)は目の前を走る盗人を追いかけていた。「なんで?どうして?」僕はとても死に物狂いで追いかけていた。しかし、盗人との距離が追いかけ始めてから縮んだ感じがしない。僕の額から流れた汗が僕を急かす。僕は周りの人に対する配慮などを考えてステルスに任務をこなしたいという幼稚なプライドを捨てて盗まれたものを取り戻すことだけに意識を向けた。僕の装備の加速装置をフルパワーにした。この装備の加速装置はタイムマシンを活用した装置で時間を圧縮し圧縮した時間を僕だけに適応する装置であった。通称Accelerator Compression。これによって周りからは僕が瞬間移動しているように見えるのである。「この盗人はしょせん過去の人間。この僕たちの武器の前には無力だろうよ。」そう僕は盗人を見下していた。こうして僕はフルパワーにした装置でこれからの時間10分を圧縮しようとした。しかしこの時僕は気づかなかった。加速装置が発熱し黒い煙を吐き出していることを。僕が圧縮装置のボタンを押した瞬間にこのことに気づいたがもう遅い。圧縮装置は軽い爆発を起こし僕と盗人は吹き飛ばされてしまった。そして僕は気を失った。(彼のトランス能力への残りデバフは90パーセント)
俺(宇津野潘)は見つけた手紙をまじまじと見ていた。その手紙の差出人は死人だったからだ。確かにタイムマシンができてから生きている人に前もって手紙を用意し、差出人が死んだあとでも読んでほしい人が読んでほしいタイミングで手紙を入手できるような手法は一時期大きく流行した。しかし、彼(二趾原天光)はそのようないわゆる流行りものをくだらないと断じる人だった。俺が彼に初めて会ったときの第一印象は偏屈な変わり者。彼は好き嫌いが多く無口であった。そして人と話すときに確認と称して話した内容を繰り返すおうむ返しをする癖があった。しかし仲がいい人に対してだけは驚くほどなつき、明るかった。俺は彼のその二面性を気に入っていた節があったと今では思う。彼は料理が好きで仲いい人にはよく手料理をふるまってくれた。俺が彼と仲良くなったきっかけも彼の料理であった。彼の作ったチキンフリカッセはとても濃厚で俺はいまだにその味を忘れることができなかった。考え始めるとまた彼の料理を食べたくなってきた。俺はおなかがすいていることに気づくことになった。仕方がないので納屋においていた干し柿を拝借することにした。うまい。まさに食べごろだ。俺は干し柿を片手に手紙に手を伸ばす。そして心のどこかに一抹の不安を抱きながら手紙を読み始めるのであった。
「宇津野へ
お元気ですか。私はもう死んどるよ。この手紙を見つけた時あなたは私が実は生きていると思ったんじゃないかい?残念。死んどるよ。あの事件からもう3年たっているのでしょうね。あなたはあの事件で最後まで私の味方でしたね。もしかしたら、今でもあなたは私の無実を心のどこかで信じているのでしょうか。もしそうなら残念だったね。この手紙が答えだよね。あなたを利用したことはとても申し訳なく思っておるよ。でも、しょうがなかったんだ。「こんなことになるなら前もって相談してくれよ」というあなたの言葉はこの手紙を書いている今でも後悔の念として私の周りに漂っているよ。この手紙は私からあなたへの贖罪の一つ。これからあなたに起きるだろうこと、今この世界で起きているだろうこと。それら運命にあらがうために用意したものがこの手紙とこの納屋に残っています。探して私のようにならないでください。
弐趾原より 2010年7月」
気持ちの悪い手紙だ。俺が初めてこの手紙を読んだ時の第一印象がこれだった。この手紙を読んで俺はあの事件を思い出す。《ブラック・タイム》を…
~~~~~~
タイムマシンが完成して10年。我々はほぼ全ての時間軸を観測し制御することに成功した。タイムマシンの応用も積極的に行われ世界は時間産業ブームになった。後悔も争いもない平和な世界が形作られていった。しかしある日空が闇に包まれた。その闇は指向性を持ち触れたものを消滅させる。この闇との闘いが1年続いた。その過程でトランス能力者の存在が公になった。トランス能力者はすべてを制御することができるという安心感が根底にあったことで成り立っていたこの社会を脅かす危険因子として迫害の対象となった。そして多くのトランス能力者がこの闇の対処に向かった。多くの能力者が消滅した。闇はタイムマシンのあるターミナルを目標に文明をリセットさせるがごとく歴史・物体を消し去りながら進行した。このまますべては闇に葬り去られるのではないかと思われていた。しかし、あるトランス能力者がこの闇の正体を突き止めた。この闇の正体は弐趾原のトランス能力「エスタスティック」だった。弐趾原を倒すために総戦力が投入された。こうして多くの犠牲を出しながらこの事件は解決し、トランス能力者が存在した記憶は抹消され、彼らは世界平和と制御研究のため隔離されることとなった。この事件がのちに《ブラック・タイム》といわれる事件の概要である。
~~~~~~
俺は手紙を読んでから手紙にあった納屋に隠されているというものを探し始めた。ひとまずこの納屋にあるものは手紙が入っていた木のバケツと干し柿以外にうずたかく積まれた干し草があるだけだった。ひとまずこの干し草を漁ってみることにした。漁りながら手紙の内容を反芻する。(彼が死んだのは今から二年前。俺がこの納屋に来るきっかけは突発的な時空間異常だ。彼はこの異常を予見していたのだろうか?この時空間異常はブラックタイムの時にそっくりだ。だから研究所の時田も慌ててたんだろうが俺も彼が生き延びていて一枚嚙んでいるかもしれないと思っている。それにしてもこの意味深な手紙にある俺に降りかかる運命とは何なんだろうなぁ。)そう考えながら干し草をどけていると地下へ通じる扉が見つかった。俺はこの地下におそるおそる入っていった。中はとても暗く生気が一切感じられなかった。服についていたライトをつける。俺は息をのむ。そこには夜見の死体があった。体は何年も前に死んでいるかのように腐食が進んでいた。手にはアミュレットが握りしめられている。俺はそれを見て吐いてしまった。俺はこの時気づかなかった。この死体はこれから俺たちに降りかかる運命の始まりに過ぎないということに。
第二章~完~
読んでいただきありがとうございます。
もうすぐ年越しですね。私はお雑煮を食べてこの年越し過ごそうと思っています。私はお雑煮にもち以外にうどんとかぼちゃを入れて味噌味で食べます。最近はとても寒いのでかぼちゃを食べるととても満たされた気持ちになります。




