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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第十五章 復讐

学校が終わる。僕は外に出ると彼がいた。「やあ。お待たせ。待った?」僕はそう言うと彼はやれやれといった顔でこちらを見る。「全く。あまりにも遅いから約束をすっぽかされたのかと思ってしまったよ、私は。」「すまない。階段で転んでしまって保健室にいたんだよ。」「また階段でこけたのかよ。お前はほんとにおっちょこちょいだな。」「あははぁ…」僕はそう力なく笑う。「さあ。もう怪我とかは大丈夫なんだよな。」「ああ。もう大丈夫だ。」「よし。じゃあ行きますか。約束の場所へ」僕たちは約束の場所へ向かって歩みを進める。他愛のない会話を交えながら。「しりとりしようぜ。しりとり。」「しりとり?お前、”り”攻めばっかりじゃん。」「なんだよ。嫌なのかい?じゃあ、代わりに提案してくれよ。この退屈を誤魔化してくれる。そしてしりとりみたいな簡単なものを。」そう言われて僕は黙る。黙っていると、しりとりが始まった。「しりとり。」「リンゴ。」「ごきぶり。」「リス。」「すいとうのり。」「リシ。」「しずがたけのしちほんやり。」僕たちにとってはなんでもよかったんだと思う。この気持ちの高鳴りを誤魔化すことができるなら。僕たちは夢中になってしりとりに熱中していた。

~~~~~~~~~~~~

僕たちは約束の場所に着く。「着いたな。」「ああ。」「俺たちはこの時を今か今かと待っていたんだ‼」僕たちは意気揚々とその建物に入った。僕たちの眼に飛び込んでくるのは均一に並べられた本たち。僕はこの景色が好きだった。だから僕はその光景をただ茫然と眺めてしまう。「おい。何してるんだ。行くぞ。」彼に言われてハッとした。僕は彼に連れられて小説のコーナーに来ていた。そこで僕たちは見つけた。僕たちにとっての生きていくための希望。その最後の一冊を。

~~~~~~~~~~~

僕は目の前に広がる絶望の首に手をかける。逃げたかったから。そんな僕をあざ笑うようにそいつは言った。「お前は今までだってこうやって逃げてきたんだろ。自業自得なんだよ。この小説はお前のものじゃない。私のものだ。」その瞬間、小説から憎しみの感情が溢れる。その姿はまるで渦の様。それはそいつの手のひらに集まり、ダガーナイフの形を成して顕現した。「そんな、どうして、やめてくれ!やめろ‼この悪魔がぁ!」そいつが僕にナイフを突き刺す。そう、執拗に命を抉り取るかのように。

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ある日僕が小説を読んでいると彼が話しかけてきた。「それ、「天肴翔」の”渦巻く陰謀”じゃん。好きなの?」急に話しかけられて戸惑った。「ええ。まあ好きで…」「へぇ。そうなんだ。僕もこの作者の作品好きでさ大体読んだんだよね。ところで、この作品読んだ?」これが彼と僕の最初の出会いだった。彼はこの作者「天肴翔」の信者だった。彼は休み時間にいつも図書館にいた僕に興味がわいていたらしい。別に本が好きというわけではなかった僕に彼はこの作者の小説の魅力を巧みな話術で表現し指し示してくれた。「本が好きじゃないならどうして図書館にあんなにも足しげく通っていたの?」彼の問いに僕は答える。「私はある本を探していたんだ。」「ある本?」「その本は夢の中で僕の目の前に現れるんだ。僕はいつもその本を読もうとするけれど読むことができず奪われてしまうんだ。」僕は夢の中で何度も何度も殺されていた。小説を見ようとして。でも夢の中で小説を取らなければ夢から覚めることもできなかった。「へぇ。その本のタイトルと作者はわかるのかい。」「作者は「天肴翔」、タイトルは”出会いと裏切りの螺旋”。」彼は彼の作品にそんなものはないと言った。その時は空想の産物にすぎないと僕たちは結論付けた。

~~~~~~~~~~~

それから数日たって、彼が慌てたように僕に話しかけた。「おい、これを見ろ。」それは何かの記事のようだった。「天肴先生の最新作”出会いと裏切りの螺旋”は今月の20日販売!乞うご期待!」「お前すげぇよ。お前の夢で見たことが現実になるなんて。これが予知夢ってやつ?」彼の興奮とは対照的に僕の心には小さい滲みのようなものができた。それは恐れ?それとも期待?わからない。「なあ。この本の発売日に一緒に買いに行かないか?」僕はうなずく。「ありがとう。独りだと心細いと感じていたんだ。何か嫌な予感というかなんというか。そう怖かったんだ。逃れられられないようなものに取り込まれてしまうような気がして。」「そうか。まあ俺も気になっていたんだ。お前が図書館に来たきっかけの夢で出てきた小説。お前はその夢がきっかけで天肴先生の作品に触れた。つまりその小説は天肴先生を知る前から夢の中に現れたんだろ?それだけで奇妙だっていうのに実際に現実に現れたなんてね。」彼は興奮している。「よし。約束だ。今月の20日の学校終わりに行こう。」

~~~~~~~~~~~

そこには小説が一冊だけ残されていた。僕たちは書店の店員に在庫を聞いたがこれが最後の一冊だと突っぱねられてしまった。僕たちはその最後の一冊を買おうとカウンターにもっていく。すると背後から一人の男がやってきた。「何をしているんだ。」そう言ってその男は僕たちの持っている小説を奪い取ろうとしてきた。彼が動いた。彼の持ち前の体術でその男を取り押さえる。彼は店内にいたほかの客に何かを呼びかけていた。でも僕はその言葉を聞き取ることができなかった。その男の顔には見覚えがあったからだ。嫌な予感がする。私の心にできた滲みはどうやら恐れだったようだ。その男の瞳が黒く染まる。その漆黒は深淵を称えていた。その男の手に、そう手のひらの中に、黒い渦ができる。そう、かつて見たあの夢と同じように。させてたまるか。僕の気持ちが高鳴る。僕を苦しめた元凶が今目の前にいる。夢でも何でもない現実で。「ついに見つけたぞ!悪魔め」僕はいつの間にか持っていた包丁でその男をめった刺しにする。感情を今までの殺意で覆いつくして包丁に込める。「死ね。この悪魔ぁ‼」

第十五章 完

読んでくださってありがとうございます。

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