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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第十一章 脱獄編 第五話

 カノジョを中心に空間が渦を成した。その渦はすべてを飲み込む闇そのもの。その闇は空間をずたずたに引き裂きながら私の片手を切断した。手から血が溢れる。カノジョはそれを見ながら笑う。あの時と同じように。その瞬間私の絶望が後悔ではなく現実として蘇ったことが分かった。私の心が恐怖の感情で満たされる。「お前、あの時の出しゃばりか。」カノジョは退屈そうに言った。「お前の能力はもう見たんだよ。面白味もない力だよな。私は消化試合をする趣味はねぇんだよ。どうする?私たちの邪魔しないんなら見逃してやってもいいぜ。」私の心に怒りが宿る。その怒りは私の慎重な判断の機会と恐怖心による体の硬直を消し去った。「黙れ。所詮人の分際で。我らに楯突くなどと片腹痛いわ。もういい。私の全身全霊をもってお前を殺す。もう出し惜しみはしない。ここで集めた信心も私の使命もすべて犠牲に捧げよう。私はそれでお前のその顔に浮かんだ笑みをずたずたに引き裂けるのなら後悔などない!」

 ~~~~~~~~~

 聖女は持っていた炎の聖剣を自身の体に突き刺す。体から出た赤黒い液体が光に昇華していく。それが剣を包み込み本来の姿を取り戻していく。溢れんばかりの光、そこから顕現せし純白のローブを纏いし天使が一人”イブ”。双翼を持ち後頭部にはエンジェルヘイローが顕現している。彼女が祝詞を唱える。それは本来の祝詞。それは空間にひびを生じさせる。そのひびが黒い渦とぶつかる。ひびを飲み込む渦、渦を散らすひび。それは向かい合う彼らの中央で拮抗する。聖女は笑う。(どうやら、こいつ弱くなってる。あの時よりも。)彼女は手を前にかざす。するとそこには本来の姿を取り戻せし炎の聖剣が顕現した。彼女は自身の神力「プロム・スパイラル」を発動。「フフフ。お前はこの剣でもって殺す。」彼女を中心に空間がうねり渦を成す。その渦は聖女の感情を伴って空間を巻き込んだ。それは歓喜、または慈悲。そしてそれを上回るほどの殺意。彼女は剣から出る炎を見てカノジョをあざ笑っていた。

 ~~~~~~~~~

 私は天使へ向かって走り出す。天使は剣から炎の渦を出す。その渦は私に向かってくる。しかしその渦はとてもゆっくりに見えた。私は黒渦を纏いし拳でそれを叩き落とす。走るスピードはそのままで。天使は私が近づけば近づくほど離れ一定の距離を取る。もどかしい。そう思った。天使は自身の翼から羽根が10枚抜け落ちたと思えばその羽根は天使が放った渦に追従する。そしてその翼は渦を叩き落そうとした私の右手を切断した。天使はさっきのお返しができて満足そうな悪趣味な笑顔を浮かべる。するとさっきの声がする。「おいおい。大丈夫か?せっかくお前の契約に乗ったていうのにこんな雑魚に手間取るなんてよ。」「黙って」「じゃあこれは俺の独り言だ。聞くか聞き流すかしてくれ。渦の使い方だ…」彼の説明はなぜだろう。直感的に理解できた。「ありがとう。」「なんだ?独り言にお礼を言われる筋合いはないが?」「今のは私の独り言よ。」私は天使に目線を向ける。天使が次の攻撃を放つ。その炎の渦に追従する羽根の数は20を超えていた。「渦の使い方だ。敵の攻撃はしょせん感情を付け加えて指向性を持たせた力にすぎない。そう、俺たちにとって彼らの存在はカモだ。」そう、この渦は無の象徴。喜怒哀楽、それらのありとあらゆる感情の裏に潜む影。私はこの渦に自分の感情、絶望、焦り、殺意を乗せていた。天使がやったように。しかし違ったんだ。この能力の本領は。

 ~~~~~~~~~~

「とどめだ。くらえ。聖なる炎に焼かれて堕ちろ。」私はそう叫びながら、全身全霊の力を渦に乗せ必殺の一撃を放つ。その攻撃はまばゆい光を放ち黒き渦を消し飛ばしながらカノジョに当たったかのように思われた。「フフフ」思わず笑みがこぼれる。ついにかつての亡霊にけりをつけることができた。そう思ったから。しかしカノジョに攻撃が当たる瞬間、炎の渦の動きが止まる。その時私は言いようのない不安を感じた。いやな予感、”デジャブ”を

 ~~~~~~~~~~

 私は渦に自分の感情を喰わせた。私の心は空洞になった。その瞬間、炎の渦の周りが変に色づいて見える。まるでおいしそうだ。「それが感情だ。」その声は言った。私はこの時、渦が本能的に動かせると感じていた。まるで渦が私の口そのものになったように。私はその炎を飲み込む。その炎は口の中でずたずたに引き裂かれた。天使の顔色がみるみる悪くなる。「なんで。私の攻撃がどうして?」私は食べた感情から彼女の存在を掌握することができた。「そうか。所詮天使も感情を付け加えただけの手段にすぎなかったのね。」その言葉を聞いた瞬間天使は激昂する。「黙れ、黙れ、だまれぇ‼ 天使でもないお前が知った風なことをいうな」「うるさいよ。遺言もつまらないのね。ただでさえ存在も退屈なのに残念だよ。ほんと。」私は天使の首から上を嚙みちぎった。天使は音を立てて崩れ落ちる。私は赤黒い液体を垂らし続けているそれをただ眺めていた。

 続く


読んでくださってありがとうございます。

次回 第十二章 強襲編 第二話

    お楽しみに

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