第十一章 脱獄編 第二話
そいつはダガーを持って近づいてきた。俺はまたこの夢かと思ってハッとした。俺はやっと夢の中で俺は今夢を見ているということに気づくことができた。俺はそいつから逃げるのをやめ、前から気になっていたそいつが叫んでいる内容を聴き取ろうと耳を澄ました。「私は土井。今日、お前はこのダガーでもって堕とす。」そういって俺の前に現れたそいつは持っているダガーを突き立てた。
俺は起きる。いつものように顔を洗って、独房に来たロボットを見る。いつものようにロボットが俺の点呼を取り、ロボットに渡された簡単な計算の問題を解き、一連の作業が終わってロボットは「何かあるか?」といつもの決まり文句を言う。俺は独房の窓から外を見る。今日も雪が降っている。その雪を眺めている間にロボットは去っていった。俺は食堂に朝食を食べに行った。
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私は彼に会うために食堂に向かう。すると彼は昨日と同じ席でカレーライスを食べていた。「うらやましいかい?」「いいえ。ここにカレーライスなんてものがあったことにちょっと驚いただけ。」彼がうまそうにカレーライスを食べる横で私はレーションを食べていた。「ここに来たということは、そういうことなんだろ?」彼が切り出した。「ええ。あなたがあれをどうやって入手したのかわからないけれど、あれに大きな可能性を感じたわ。」「わかった。」そういって彼が取り出したのは鍵だ。「これは俺の持っている独房の一つの鍵だ。場所は三階の角部屋。誰にも悟られるなよ。」
その独房は考えられないほど豪華だった。箪笥と本棚、トイレに風呂、台所に冷蔵庫まであった。中央にはロボットが持っていた銃が置いてあった。持ってみるとずっしりとした重さにひんやりとした金属の冷たさが肌にかかる。
「どうだ。そいつぁ」気づけば後ろにその男がいた。その男は私に拳銃を突き付けている。「ええ。想像以上の完成度ね。」私はその銃を机において手を挙げて男に向き直った。「今から、2つ質問をする。嘘をついたら殺す。」彼は私の顔を見透かすように見ている。彼の瞳は赤っぽい茶色だった。私は黙ってうなずいた。「まず一つ、このダガーに見覚えがないか?」そういって彼は一つの絵を見せた。そこには全長10-30 cm程度の諸刃の短剣とそれを持っている男の絵があった。私はその短剣に身に覚えがなかった。「ないわ。この絵が何だっていうの?」「知らないならお前には関係ないことだ。次の質問だ。これに見覚えはないか?」そういって渡してきたのは写真だった。そこには三人の人物が写っている。そして彼らはおそろいのアミュレットを持っていた。「知らないわ。」私の答えを聞いて彼は拳銃を置いた。「嘘はついてないようだな。いいだろう。俺はお前を一時の同胞と認めようじゃないか。」彼は変に笑いながら言う。「あんた名前は?」「私の名前は跡野預御。囚人番号0050。ここには1年前から来たわ。」「道理で見ない顔だと思ったぜ。俺は囚人番号0008。他の囚人からは”スレイブ”と呼ばれている。」私とスレイブは握手をした。「さっきはすまなかったな。こっちから一方的に誘ったようなものなのに。でもこんな誰が敵か味方かもわからない場所なんだ。わかってくれよな。」「じゃあ質問させてよ。二回さっきあなたがやったように。」私は彼の頭に拳銃を突き付ける。彼は笑いながら私の顔を見た。「一つ目はこの部屋は何?監獄の中とは思えないわ。」「この部屋は俺が奪った部屋の一つだ。この監獄の中には鍵付きの部屋がある。ここはその一つ。この部屋は鍵を持つものに所有権があり、ロボットもそのルールに従っている。」「二つ目にこの銃はどうやって作ったの?」「この銃は俺の隣の独房にいた奴の形見のようなものだ。あの設計図はこの銃を分解して作成したものだ。」彼はそういうと私の銃の先を手でつかんで言った。「質問はそこまでだ。これからいろいろ協力してもらうぞ。この監獄は協力しなければ出れないつくりだったからな。」私はうなずいた。
「俺は食堂でやらなければならないことがある。だから預御、お前は教会に行ってこれを探してくれ。」初対面で私を呼び捨てなことに少し違和感を持った。彼はそう言って私に一枚の絵を渡してきた。それは地下に続く階段だった。「隣の独房の奴、仮にKと呼ぼう。Kは脱獄王と呼ばれていた男だった。Kにとって犯罪は現実から目を背け自由を輝かせ一つの目的に集中するための手段でしかなかった。Kがこの監獄に収監されて多くの人に働きかけたことで、この監獄の出入り口を見つけることが大きなムーブメントになった。彼らのほとんどはロボットに殺されてしまったり、聖女の奴隷になってしまったりしたがKは彼らの犠牲をもとに教会内部に地下の階段の存在を割り出した。しかしKがその階段を調べようと教会に行ってからKは変わってしまった。”お前たちなんなんだ。ここはどこなんだ。なんでその銃を持っているんだ。”と、うわごとのように言ってロボットに処刑された。この絵はそいつが死ぬ前に俺に書いて渡してきたものだ。ここに行けってな。」「でも教会は危険よ。多くの囚人があそこに行ってからおかしくなっているわ。」それを聞いた彼は待ってましたとばかりに私に手渡した。「あんたにはこの銃とこのアミュレットを渡しておく。この銃を持っているとロボットには敵対されなくなる。そして教会の聖女の洗脳に関してはお守り等が進行を遅らせてくれる。ひとまず預御は入り口を探ってくれ。できるだろ。」彼は半ば無理やり私に道具を渡した。私は何か言いようのない不安感を感じながら教会に向かった。
続く
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