第一章 世界消滅 (前編)
初投稿です。
彼の名前は土伊中条。彼はどこにでもいる普通の大学生のように見える。私たちは彼を初めて見た時そう思った。しかし、彼にはこの世界の命運を分けてしまう特異点だったのだ。
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我々は観測者。未来ではタイムマシンが完成した。それによって我々人類は未来人によってタイムマシンができるこの時代まで生かされてきたのだと知った。そしてその役割をかわるがわる交代することによって歴史が紡がれてきたのだった。したがって、我々人類にとって時間というものは取るに足らないものになってしまった。そして我々は時間を支配し、かつて未来人が行っていたように歴史を抹消・改変する事によって我々にとって都合の良い歴史を紡いできたのだった。
しかしある日を境に状況が一変した。私たちは西暦1年あたり1万の同胞を送り込んでいた。そして、その全員に我々の時間(タイムマシンができた時間軸)から観測可能な生体コネクタ型位置決め装置(GPS)と連絡手段を持たせていた。連絡手段はタイムマシンを応用した思念伝達装置でタイムマシンがあるターミナルから、連絡事項を誇張なしの一瞬で我々の世界のデータベースサーバーに送られるようになっていた。しかし1999年7月にいる私たちの同胞の生体反応が途絶えた。そしてその消滅は波状のように広がった。最終的にその年の同胞全GPSの反応が途絶した。しかし連絡装置には何も送られていなかったのである。我々はこの異常事態を理解した。そして、第一回1999年7月探査部隊 オリジン・ケイオスが組まれることになる。
この部隊に編成された部隊員はどのような環境にも耐えうる訓練を積んだエキスパート達であった。数は約3万名ほどだった。彼らには小型タイムマシン内臓M16(TM16)と小型タイムマシン内臓ACUを標準装備として与えられていた。TM16 は打った瞬間にタイムマシン技術の応用で狙った対象に着弾するタイムマシン軍事利用禁止条約(Treaty on the Prohibition of Timeline Weapons)に抵触する兵器である。小型反転タイムマシン内臓ACUは銃などの攻撃が当たる瞬間を任意に操作できるようにする装備である。またこのほかにも戦車、戦艦、戦闘機など一見過剰に思える戦力が投入された。しかし我々が思っていたよりも事態は深刻だったようだ。
1999年が部隊を送り込んで一瞬に消滅した。連絡機器には触れるな、来るななどのメッセージが残されたのみとなった。また、1999年だけ消滅したと思われていたこの異常は加速度的に増加し我々が操作していた歴史が次々と消滅し我々の存在を脅かし始めた。
そこで第二回時空間異常探査部隊 カプア・スぺスが組まされることになる。
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僕は眠い瞼をこすりながら会議室に続く廊下を歩いている。急な呼び出しをもらったからだ。「せっかくゲームが盛り上がってきたところなのにさ」と悪態をつきながら会議室への道を急ぐ。「まぁまぁ。俺たちを呼ぶってことは余程のことがあったんでしょ。」そういう彼は朝早い呼び出しだっていうのにとても元気で見ていて鬱陶しい感じだ。彼のこんな姿を見るのは久しぶりのような気がした。「最近は退屈で退屈でしょうがなかったからね。わたしゃとてもわくわくしとるよ。」そういう彼女は満面の笑みでくるくる回りながら僕たちの速歩きに追従している。普段の無気力な姿を見ている身としてはその変わりように驚いたものだった。彼らの鬱陶しさに辟易しながら会議室に到着した。そこにはTimeline 研究所所長
時田・治朗がいた。「希代、潘、夜見。急で悪いな。事態は一刻を争うのだ。」彼はとても焦っているように見えた。Timeline 研究所(T研)は僕たちが入れられている施設であった。タイムマシンが完成して時間を支配する過程で人間の感覚に変化が起き超能力のような力に目覚める人が一定数いた。そのような人たちのことをトランスと呼んだ。トランスはとてもごく少数だったため、研究所に収容される形で混乱を避けるために秘匿されたのだった。「それでいったい何があったんです?」僕、今生希代は尋ねた。「また新しいトランスが出て暴れてるんですか?」彼、宇津野潘はそれ以外考えられないとでも言いたげな顔だ。それもそのはず僕たちがトランス能力を使えるのは同じトランスに限定されていたからだ。「また、仲間が増えるの。楽しみ~。」彼女、﨑野夜見は無邪気だ。ほとんどのトランスは国にとって能力が危険だったり、役に立たなかったり、制御ができなかったりする場合、殺されるか能力の記憶を抹消してしまうため僕たちの仲間なんてほとんどできない。僕はあきれながら彼女の言葉を聞き流した。「今、世界は消滅の危機を迎えている。時空に大規模な渦のようなゆがみが発生している。お前たちも時空調査のために国の軍隊が派遣されたのは聞いたと思う。結果は失敗だった。現地で何が起きているのか、送り込んだ軍隊に何があったのか何一つわからなかった。そして状況は刻一刻と悪化している。3秒に一つの時間軸、我々が紡ぎだしてきた歴史が消えているのだ。このままの進行スピードではもって一週間だろう。そこでお前たちに任務を与える。一つは1999年の7月に向かい何が起きているのか、この異常の原因を探ることだ。わかり次第、夜見 お前のトランス能力で報告しろ。二つは、可能な限りの異常への対処だ。可能な限り時間を稼いでくれ。この二つの達成のための手段は問わん。もし必要なものがあったら夜見の能力で伝えろ。可能な限り用意する。」こうして僕たち3人の精鋭トランス部隊 カプア・スぺス結成し1999年に送り込まれることになったのだった。
僕たちは初めに1998年12月を目指した。1999年をダイレクトに目指した第一派遣部隊は消息を絶ったため危険だと判断したからだ。しかし、時田の説明にあったような時空に発生した渦によってタイムマシンが空中分解してしまった。それによって僕たちはそれぞれバラバラな時間に飛ばされてしまった。なんとか﨑野夜見のトランス能力「ファーシフト」によって連絡を取り合うことができた。「ファーシフト」それは移動という概念の拡張。あらかじめ対象を自覚することができれば夜見自身を起点として物事を移動させることができる。本当なら僕らの飛ばされた年月日と居所がわかれば夜見の能力で全員合流できる手はずだった。しかし、タイムマシンが壊れたことで僕たちは僕たち自身の正確な位置を自覚できなくなってしまった。仕方がないので保険で用意しておいた夜見の髪の毛が編み込まれたアミュレットを用いて声の移動を行いひとまずは合流することを目指してそれぞれここが何年の何月何日なのか、そして現在地はどこなのかを調べることになったのだった。
後編に続く
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