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勇将ノ下二弱卒ナシ

「5班の同期全員集合ー!ってことで、本当は自己紹介とかした方が良いんだろうけど、緊急なので、やるならパッと各自でよろ。」


先輩は机の上にあったパソコンを開き、電源をつける。すると壁一面にあるモニターが青白く光った。真剣な表情で何かをずっと打ち込んでいる。


「まぁ何が起きてるのか分かんないって思うのは仕方ないよ。だから、見てもらうほうが早いよ、ね!」


エンターキーを叩く音が部屋に響いたと同時にモニターには映像が写し出された。それには、薫先輩とREDの幹部と思われる人が戦ってるのが見てとれた。

武器を持って戦い、互いに譲るまいと全力で戦ってるのが容易に想像できる。まるでフィクションの映画だ──だけど、薫先輩から流れている血が、現実を伝えていた。


「ほんとに、やばいところにきてしまったみたいだ」


思わず、口から本音が漏れ出た。手は静かに、ずっと震えていた。握りしめても、止まらなかった。




ーーーーーーー




一歩も譲らない攻防戦。俺は相棒の日本刀を持って相手に挑んでいる。だが相手は二丁拳銃をその手に持っている。幹部と云われるまである、やはり動きは的確で無駄がない。

俺も負けじと抵抗しているが、敵わない。何弾かは俺の腕や足に当たり、血が流れている。


「おいおい幹部サン。一体何の用だってんだよ。」


立て直すためにそんなことを半分冗談半分本気で云ってみた。別に死ぬくらい酷い怪我だって訳ではない、が傷だらけの俺に対し無傷の相手。流石に少し焦る。


「俺自身が目的を持っている訳では無い。うちの参謀殿が『ここに向かえ』と俺に指示した次第。」


RED幹部の水無瀬太一(みなせたいち)。二年時より幹部に就任している。赤の手袋を着けていて、酷く冷たい目をしている。

それにしても「参謀が指示した」、その言葉が妙に引っ掛かった。去年までの作戦参謀なら初日に襲うなんて指示しなかった。日常に慣れて一年生共が少し油断してしまう、一週間程後に指示を出す、そういう性格だったはずだ。


「そーかよ!」


攻撃を仕掛けるも反撃をくらい、水無瀬に刃が届かない。感情もなく唯淡々とこちらを狙う、勝利だけを狙っているロボットみたいだ。


『薫!きついかもだけどこっち来させないようにちょっと耐えて!』


インカムに詩の声が響く。


「当たり前だろ、任せろ」

『流石副班長、頼りにしてる!』


深呼吸をして、再び日本刀を握る。余計な思考はいらない。

俺の目的は一つ。みんなを守る、それだけ。


『誰かを守れる人になる』が俺の正義だから。


前に踏み出して一気に距離をつめる。水無瀬はそれに驚いたようで一歩下がったが俺はさらにつめる。その時に日本刀を突きつけると肌に刃が当たった感触がした。

だが、水無瀬の足技でバランスを崩してしまった。倒れそうだ。目の前に銃口が。まずい、やられ───


「危ないじゃないの、失礼ね。REDの幹部って。アポイントメントも無しに。」


やられると思った矢先に俺と水無瀬の間に一人女性が立っていた。片手で俺を支え、もう片手で銃口の向きを変えていた。

一瞬の出来事だった。少し目を閉じていたら目の前にいた。


雨森(あめもり)班長、」

「ほらしっかり立ちなさい。私の後輩でしょう?」


そう云って俺に微笑みかけてくる。5班班長雨森紫音(あめもりしおん)。俺の大切な先輩で、俺に刀を教えてくれた人。


「私の後輩は全員“出来る”の。間違ってる?」


その雨森班長の放つ静かな圧が俺を強くする。手を貸してもらい立ち上がる。

班長は静かに笑い、バッチを押すと手には班長より大きな剣が握られていた。


「さて、どうします?」


表情こそ笑っているものの、目は笑っていなかった。身長は俺よりも低いのに班長の背中は誰よりも大きく見えた。


「これは重畳、だが面倒になる前に立ち去ることとする。失礼した。」


水無瀬はそのまま回れ右をして去っていった。

こうして初日のひと悶着は幕を閉じた。

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