青キ少年ハ眼ヲ閉ジル 一
眠気が襲う朝。寝ることは好きだが起きるのは嫌いだ。嫌でも現実を見てしまう。それに加えて今日は入学式だ──本当に嫌でしょうがない。
勿論自分で入学を決めた学園だ。ただ俺が環境が変化するというのが苦手なだけで。
そんな事を考えつつ嫌々家を出、学園に向かいながら学校について思い出す。
【御伽戦争学園】。生徒同士で戦い、勝ったら賞金が貰える。正直賞金に目が眩んだ所はある。だって十億円だぞ、いくら山分けといえ一人当たりの値段は結構なものだ。
この学園、長いこと続いているらしいが決着がついたことは一度もないと、そんなのだから賞金が膨れ上がっていると聞いた。
在学中に決着がつく自信がない。けど俺は学園の試験を受け、試験に合格してしまった──否、確かに自分の決断だ、でも目立つのは嫌い。しかも学園は偏差値もそこそこ高く、合格する気がしなかったんだ、嗚呼どうしよう!
俺は今にもはち切れそうなくらい悩んでいるのに空は俺を嘲笑うかのように雲一つ無い晴天だ。入学式にはぴったりの天気だ、なんて素晴らしいのだろう──そんな柄にも無いことを思ったりして。
気付いたら学園に着いていた。
学園は俺の通っていた中学より何倍もでかい。
というかさっきまで歩いていた場所も学園の私有地らしい。この学園の生徒の家族に住む権利が与えられる場所(俺の親は海外で働いていてずっと前から一人暮らしをしているため俺には関係の無い話だが)だとさ。
桜がきれいに舞っている。俺らの入学をお祝いしてくれているのだろう。
周りの人達は家族連れがほとんどだ。桜の前で記念写真とか撮ってる。そんな中一人で体育館へと向かう。
「お名前をお伺いいたします」
体育館の受付の女子生徒が言ってきた。赤がとても良く映えるピアスをつけている。
「清水飛鳥です。」
「かしこまりました、席はこちらになります、良くご確認下さい。そしてこちらが書類です。この後書いて提出のものもありますので悪しからず了承ください。」
「ありがとうございます。」
説明を受け、書類を貰い、席へ向かう。
─俺おかしくなかったかな、ちゃんと話せていたかな。
ぶっちゃけ緊張している。周りの目が気になってしょうがない。心臓が痛い。手が冷えていくのを感じる。
少し下を見ながら席を探していると強い衝撃が身体を襲った。人にぶつかってしまった。相手が倒れそうになり咄嗟に腕を引いた──なんと女性だった。
「あわわ!ごめんなさい!ごめんなさい!怪我してないですか!?」
「全然大丈夫です!俺も急に手、引っ張っちゃってごめんなさい!」
最悪だ。初日からこんな事になるとは想像もしてなかった。
相手はサイドテールがとても似合う可愛らしい女性だった──顔はすっかり青ざめていたが。
お互いにあたふたしていたが、段々と周りの目線が痛くなってきた。
「まあお互い様ですし座りません……?」
「ですね、」
逃げるように場所を去り、席を見つけ座ると予想外なことに隣にはさっきの子が座っていた。
思わぬ出来事にびっくりし、お互い目を合わせて少し固まった後、笑いが溢れて二人で静かに笑っていた。
「まぐれって凄いですね!」
「そうっすね、面白いです」
そんな会話を交わした後でも二人で笑っていた。
こんな出来事があったからか、何か心にあったモヤモヤが晴れた気がした。
散々笑った後、未だ式まで時間があるからと少し話をしていた。
「そう言えばお名前は?」
「俺、清水飛鳥って言います。飛鳥って呼んでもらって構わないです。」
「私、鏡楓です!楓って呼んで下さい!」
「楓さん、ですね」
「あ、敬語辞めましょうよ!タメ語で話さない?」
「う……」
そもそも俺は人と話すのが苦手だ。昔からコミュニケーション能力の高い両親に挟まれて生きてきたが、それに甘えてしまって中々人と話すことをしなかったお陰で今の俺が誕生している。
躊躇っている俺にずっと微笑み掛けてくれる楓さんを見て申し訳なさが積もり、
「よろしく…」
と聞こえるか聞こえないか微妙な大きさで一言云うと、とても喜んでいる様子で、見たことのない満面の笑みで
「うん!飛鳥くんよろしくね!」
と返事してくれた。
『拝啓、海外にいる両親へ。はじめて俺の友達ができたよ。』そんな手紙を書きたくなる位に俺は心が踊っていた。




