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第二話「回帰転生」

 そよ風が頬をくすぐる。背中からじんわりと草と土の匂いに包まれている。いつの間にこんなところで寝そべっていたんだっけ。

陽射しがほんのりと足元を照らしているようで、あたたかく心地良い。顔はどうやら木陰に入っているらしく、木漏れ陽が時折り降り注いでくるのか瞼越しにちらちらと光を感じるけれど、眩しいというほどではない。このまま微睡んでいたくなるような、やわらかい光だ。

 あぁ、こんなふうに自然を肌で感じるなんて、いつぶりだろう。鼻から深く息を吸い、口からゆっくり細く長く吐いていく。

どこからか花の香りもしてくる。風が運んできたのだろうか。なんだか懐かしい…

 ん…?懐かしい…?

ぼんやりした頭で感慨にふけっていると、顔に揺れていた木漏れ陽がふと陰った。


「アンナ!やっぱりここにいた!!」

 誰…?起こさないでよ、人がせっかく気持ちよく寝てたのに…

「誰?じゃないよ!寝ぼけてないで、もうすぐ謁見が始まるんだから!早く行かなきゃ!」

 どうやら心の声がそのまま口から出ていたようだ。

やだよぉ、ねむい…

「眠いのは見ればわかるけどね?もう〜、ちょっと目を離すとこれなんだから。

はぁ、この呼び方にするとご機嫌斜めになるけど、仕方ないか」

なにやらブツブツと呟いているようだけど、もう少しだけ…

「起きてください!アンナ王女殿下!!!」


 ハッとして、飛び起きたーーーと思ったその瞬間、ゴッッという音と同時におでこに鈍痛が走り、目の裏に火花が散った。


「〜~〜っ!!」起こしてくれた誰かも、私と同じく呼吸が一瞬止まったようだ。


 突然の衝撃に目を閉じてしまい、項垂れたまま動かせない私の頬を、誰かの両手が包みこみ、すくい上げた。

「アンナ!ごめんね!痛かったよね、大丈夫?」

声に焦りが混じっている。「わざとじゃないんだ」とか「まさかあんなに勢いよく起きると思ってなくて」とか、早口で捲し立てられる。

 まだ痛みでじんじんするけれど、こんなにも人を狼狽させるのは居たたまれない。大したことはないと伝えなくてはと、そろりと目を開ける。


 飛び込んできたのは、ヘーゼル色の瞳。琥珀がかってきらきらしている瞳が潤んで見えるのは、おでこをぶつけた衝撃のせいか、人に痛みを与えてしまった焦りのせいか。

 さらさらと風に揺れる黒髪は、大きな瞳と彫刻のような鼻筋、薄いが形の良い唇といった端正な顔立ちを引き立てている。


「………アンリ?」

見覚えのある、懐かしい顔。

「よかった!僕って石頭だから、アンナの頭が悪くなっちゃうかもって焦っちゃった」

へへっと人懐っこく笑う、顔。

あなたは…

「どうしたの、アンナ?頭が悪くなるなんて変なこと言わないで!本当にそうなったらアンリのせいよ!って怒るとこでしょ?」

いたずらっぽく笑う、あなたは…

心の声と同時に、思わず口も動いてしまった。

「どうして…、あなたが、生きてるの…?」

口が渇いて途切れ途切れの声になってしまった。

それに今、あなたがいるということは

「私は、アンナ?」


 ただでさえ大きなヘーゼルの瞳が、さらに大きく見開かれる。

「……っ!大変だ!!」

 あどけなさの残る顔に反して、意外にも力があったようだ。体がふわっと浮いた。

目の端に草の先や樹の根が入っていた視界が、艶のある空色のシルクに覆われる。驚いて身じろぎしようとした瞬間

「動いちゃダメだよ!僕に掴まってて!」

 あまりに真剣な眼差しに、思わず固まってしまう。そのまま横抱きにされたまま、ずんずん進んだ先に見えたのは

 ーー懐かしの我が家である、白亜の城だった。




転生しました〜!

転生というか、回帰というか、なんというのか。 


「人生をやり直せるならいつがいい?」

と聞かれたら、絶対にやり直したくない派です。


なのに人にはやらせるっていう…ね。

よくないね…。



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