第十話「前世の世界で見る夢は Ⅲ」
※前半アンリ視点、後半アンナ視点
※初夜の場面となります。苦手なかたはお控えくださいませ
※できるだけ淡々と、直接的すぎる表現にはならないように、心理描写を中心に書いたつもりです…。が、もし何かお気づきの点がございましたら、やさしく教えていただけたらうれしいです…!
目まぐるしく変化していく日々の荒波を越え、戴冠式と結婚式を無事に終えたその晩ーー僕たちは初夜を迎えた。ようやく名実一体の夫婦となった。
アンナは、ずっと涙を流していた。
溢れ出る雫をこの指ですくい取って、そしてまた次の涙をすくう。
それが果たして恐怖のせいなのか、本当は拒否したい気持ちの現れなのか、どうしても与えざるを得なかった痛みのせいなのか。
涙の理由を、聞くことはできなかった。聞くのが恐かった。
ただただ彼女の頭を撫で、髪を梳き、眦に、頬に、唇を寄せることしかできなかった。
国の重責を一身に受け、日に日に痩せていく彼女に、自分の気持ちを吐露することは憚られた。
あなたが僕をどう思おうと、僕はあなたを愛している。
……そう言葉にして伝えてしまいたい気持ちに、蓋をし続けている。
人としての、個人としての感情を優先させられるような、そんな時間も余裕も僕たちには存在しなかったからだ。自分の気持ちを押しつけて、彼女の重荷にだけはなりたくなかった。
けれどそれでも、どうしてもわかってほしいという願いをこめて、口吻を落とす。
新たな涙が、彼女のこめかみを伝っていった。
愛する人に、耐えさせることばかりを強いてしまっているのだということを、またもや思い知ってしまった。
そのままゆっくりと意識を手放していってしまった彼女の寝顔を見つめ、そしてまた、今なら赦されるのではと再び口吻をした。
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アンリの手は、やさしかった。
王命がゆえに仕方なしに夫となってしまった者ではなく、まるで本当に愛してくれているかのようだった。
あたたかい涙が次から次へとあふれてしまって、止められなかった。
しかしそのたびに、涙をぬぐうのは僕の仕事とでも言わんばかりに、すべてを彼がすくい上げてくれた。
やっと訪れた、ふたりだけの時間。
ずっとこの時間が続いてくれたらどんなにいいだろう。
それまでずっと唇だけを避けてきたように思えた口吻が降ってきたとき、再び私は泣いてしまった。
あまりにも幸せで、夢のようだ。
そう彼に伝えたい。伝えるなら今しかないと思いながらも、今日まで酷使してきた私の体力は限界を迎えてしまったようで、私の意識はそこで途切れてしまった。
もっといろいろ心理描写も書き込みたかったのですが、そうすると書いて大丈夫なラインがわからず…
ビビリ散らかした結果、この短さになりました…。




