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42本当の事を知る(ネイト)


 俺が仕事から帰って来るとミーシャがいなくなっていた。

 手紙を見て驚いた。

 自分の行動がミーシャを傷つけていた事に改めて後悔する。

 俺はミーシャを探しに王都の街中を探し回った。

 馬車乗り場でそれらしい女性を見かけなかったかとか、街中のカフェやレストランも見て回った。

 それから街をあちこち探しまわった。

 どこにもミーシャはいなかった。

 ベルランド子爵の所に明日の朝いちばんで出て行ってみようとその夜遅く屋敷に帰った。

 まんじりともしない夜を明かす。

 翌朝は仕事を休んで馬でベルランド子爵家に向かう準備をした。


 カティが馬屋にやって来て俺にハンカチを差し出した。

 「ミーシャ様を連れ戻してください。これはミーシャ様が若旦那様の為に刺繍されたハンカチです。若旦那様にいつも優しくして下さるお礼に作られたそうです」

 俺はカティが差し出したハンカチをじっと見る。

 俺の色だとすぐにわかった。こんなものをミーシャが作ってくれていたなんて…

 「ミーシャ様はこちらにまた戻られた時、こんなものもう捨てておけばよかったとおっしゃったんです。きっと若旦那様と若奥様の邪魔をしてはいけないと思われて…それで私、捨てるなら下さいって言ったんです。もちろん折を見て若旦那様にお渡しするつもりでした」

 胸の奥から喜びが湧き上がるがそれは泡のようにすぐに消えた。

 「俺のせいだ…」

 「ミーシャ様は若旦那様の事を慕っていらっしゃいます。だからこそいたたまれなくなって…」

 「ああ、カティ心配するな。きっとミーシャを連れ戻す。ありがとう。行って来る」

 「はい、お気をつけて。行ってらっしゃいませ」

 俺は硬い決心をして侯爵邸を出た。

 急いで馬を飛ばしたおかげで昼前には子爵家に到着した。

 だが、ミーシャはベルランド子爵家には帰っていなかった。連絡があったらすぐに知らせてくれるよう頼んで帰る。

 子爵がもし難しいようなら実家で産んでしばらくこちらで育ててもいいとも言ってくれたが断った。

 そんな事をさせるつもりはないからだ。

 ミーシャには俺のそばにいて欲しいから。

 そして俺はまた王都に引き返して来た。

 自宅の邸宅に着いた頃にはもう夕闇になっていた。


 門をくぐると使用人が教えてくれた。

 「ネイト様。若奥様がお帰りです。それに若奥様のお母様と騎士の方もご同行されてます」

 「そうか。ちょうどいい。俺も話がある」

 俺は今日こそ決着をつけようと思った。

 もうミーシャを失いたくない。そんな思いでいっぱいでそれにはメリンダと離縁するしかないとわかっていた。


 玄関を入ると母さんが走って来た

 「ネイト。メリンダが帰っているの。早く、あなたを待ってたのよ」

 「ああ、さっき聞いた。リビングか?」

 「ええ、義理母様もあなたが帰って来るのを待つって言われて」


 俺はリビングルームに入る。

 ソファーにはメリンダと母親。パミラがすぐ横に立っていた。

 後ろには騎士が控えている。彼は知っている奴だった。デュークとは騎士団にいた時の同僚だったが今は声をかけるまではない。

 「これは義理母様、お待たせして申し訳ありませんでした」

 メリンダとは顔も会わせたくなかったのでちらりと目をやっただけだった。

 「いいのよ。こちらこそ突然押しかけて来て申し訳ないわ。ネイトさんもお元気そうで何よりだわ」

 「ありがとうございます。それでお話と言うのは?」

 俺は向かい側のソファーにどさりと座る。

 (本当はすぐにでもメリンダと離縁の話をしたい所だが)

 「ええ、デュークあなたもここに来て」

 「はい、私が話しをします」

 デュークがソファーに座る。

 (おいおい、一体なんの話だ?)


 「実はがストン侯爵令息…私はメリンダと過ちを犯しました。申し訳ありません。驚かれるでしょうがメリンダのお腹の子供は私の子なんです。こんなことを言うのは無謀な話だと分かっています。ですが…どうか離縁を受け入れて下さいませんか?」

 「今なんと?」

 俺は耳を疑った。(メリンダの子が俺の子ではない。でも、俺は確かにメリンダとそういう行為をしたはずで…どういうことだ?)

 パミラがばっと床に土下座した。

 「ネイト様。申し訳ありませんでした。あの夜関係を持ったのは私なんです。メリンダ様はベッドの中にはいらっしゃいませんでした。だからメリンダ様はネイト様とは…」

 脳内が真っ白になる。

 「ばかな事を言うな。いくら何でもメリンダとパミラの区別くらい…」

 あの夜の事が浮かぶ。真っ暗い部屋の中。声が聞こえた。メリンダの声だった。

 確認して答えたのもメリンダの声だった。

 確かに顔は見えなかったがメリンダに触れたこともない俺はわからなくなった。


 「ネイト聞いて…違うの。パミラは悪くないの。私が身ごもって困ってると言ったからパミラはそんな事を思いついてしまったの。私とパミラがベッドの中で入れ替わることを。私はベッドのすぐそばにいて受け答えは私がしたの。でも実際身体を繋いだのはパミラだった。だから私があなたの子を身ごもるはずがないのよ。ごめんなさいあなたを騙して…でも、デュークの事が知れたら彼が困ることになるって思ったら…言い出せなかった。でも、勘違いしないでデュークは何も知らなかったの。昨日詰め寄られて彼の子だってばれて、それでデュークがきちんと謝らなきゃって言ってくれて。だからネイト…」


 メリンダは一生懸命言い訳をした。おまけにデュークのために泣いている。

 俺はそんなメリンダを見てお前にもそんな感情があったのかって思った。


 (はっ、さぞ滑稽だったらうな。笑うだろう。俺はパミラとやったのか!噓だろう?クッソ!俺があんなにミーシャの事で困っていたのに、お前のやったことはミーシャを追い詰める事だけだったな。ほんとひでぇ女だよお前はって言うかすぐ離縁してやる。二度とお前の顔は見たくない!

 それにデューク。お前謝って済む問題かよ。俺はどれだけこけにされてんだよ!) 

 俺は頭の中でデュークとメリンダを罵倒していた。







 

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