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35やっぱりです


 私はネイト様にくぎをさしたつもりだった。

 彼は相変わらず毎日仕事が終わると夕食後お茶を飲みに来た。

 次の週末には昼食にとろふわオムレツが食べたいと言われて昼食を一緒に取った。

 それからは週末の昼食と夕食はネイト様と一緒に取るようになる。

 「ネイト様私はこうやって一緒に食事が出来てうれしいですよ。でも、奥様とはうまく言ってるんですか?」

 私はずっと離れにいるので若奥様がどんな風に思っているか全くわからなかったので不安もあった。

 ネイト様のご両親もあまり顔を合わすこともなかったしカティは本邸の様子はあまりしゃべらなかった。

 私もあえて若奥様のことを聞きたいとは思わなかったから。

 

 「うまくって…まあ、一応言われたように声を掛けたり…そうだ。ミーシャに言われたように花を買って帰った。ゆりの花だ。でも、ゆりは花粉が落ちて気持ちが悪いって突き返された。あいつはまったく可愛げがないんだ」

 ネイト様はそう言って口を膨らませた。

 「ふふっ、ネイト様だって子供みたいですよ。そんな事を言ってもきっと喜んでられますよ。頑張ってくださいね」

 「何だかおかしな気分だ。好きな女から嫌いな女と仲良くすることを応援されるなんて…」

 「だって、これからはふたりで仲良く子育てしなきゃいけないんですよ。しっかりして下さい。ネイト様はパパになるんですから」

 「パパか…はぁぁぁぁぁ」

 ネイト様は盛大なため息をついた。


 それからたまには散歩も大切だと庭を二人で散歩することも日課になり平日はネイト様が帰って来て散歩を楽しむようになった。

 私は5カ月になっていた。

 少しお腹も目立って来て張りを感じるようにもなった。

 ネイト様が仕事から帰ってきて私の所に来た時だった。

 「ボコッ‥いたっ!」

 私はお腹を抱えて腰を折る。

 「ミーシャどうした。お腹が痛いのか?」

 ネイト様が慌てて私の所に駆け寄った。

 「ネイト様。今赤ちゃんがお腹を蹴りました。もしかして男の子ですかね?もう乱暴だわ」

 私はお腹をさすりながら文句を言う。

 ネイト様がはっとした顔をして途端に破顔した。いきなり私のお腹にそっと手を当てる。

 「お~いパパだぞ。あんまりママを困らせるんじゃないぞ。元気で育ってくれよ。お前はいい子なんだからな」

 「もう、ネイト様…」

 私はすごく幸せだわ。

 例え子供を手放したとしても彼がいれば安心だと思えた。またそれを信じなければ不安で押しつぶされそうだった。

 強がってはいたが日に日にお腹が大きくなって行くうちにお腹の子供にとんでもなく愛情が湧いて来る。

 私は愛しくて愛しくてどうしようもなくなる感情に戸惑いを覚え始めていた。

 本当に子供を手放せるだろうかと…


 ある日若奥様(メリンダがお出かけになるときに鉢合わせした。

 「ちょっとあなたいい加減にして!」

 いきなりメリンダ様はきつい目で私を睨んだ。

 そしてつんと顔を反らして言った。

 「まったく!まるで泥棒猫ね。夫に色目を使って。ふん!私が身ごもって予想外だった?残念ね。ネイトもご両親もあなたの子なんかどうでもいいのよ。だって私は妻なのよ。この子が正当な侯爵家の跡取りになの。あなたの子はどうやっても婚外子なのよ。それなのによく平気でここに入れるわね。いくら義理父様が許したからって…」

 私はいたたまれなくなって頭を下げる。

 「申し訳ありません。私もこんなことになるとわかっていたら最初からここには来ていません。ですが若奥様もネイト様を拒んでいらっしゃったではないですか。だから妾を迎えることになったはずです。それに今さらどうしようも出来ません。私にどうしろと?」

 (私だって居心地が悪いに決まってますから)

 「簡単な事よ。あなたが出て行って、黙って出て行けばいいのよ。よく産もうなんて思ったわね。この雌豚!」

 メリンダ様はそう言って私を突き飛ばした。


 「どし~ん!!」

 私は盛大に尻もちをついた。

 「何するんです!いくら何でもひどすぎます」

 私は起き上がろうとして下腹部に痛みを覚える。

 「あっ…おなかが…誰か助けて~早く誰か来て~」

 私は大声で叫んだ。このままでは身の危険を感じたからだ。

 「黙りなさいよ!」

 メリンダ様がさらに怒りをあらわにする。

 「メリンダ様いけません!」

 パミラが急いでメリンダ様の前に出て彼女を押し止めた。


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